仕事を楽しむ
私の人生を省みて、これまでに一番希望と期待に夢膨らんだのはいつのことかといいますと、高校に入ったとき、大学に入ったとき、そして新入社員として就職したときですね。
未知の大きな世界が目の前に拓けて愉快でたまらない、という実感です。しかし、高校は受験が控えているし、大学は所詮勉強する場ですから、人生の本当の味を満喫できるぞ、と張り切ったのは、やはり就職のときです。皆さんも、新入社員の頃を思い出されると、ほろ苦い快感が湧いてくるのではないですか。
そのような体験をもう一度してみたい、純粋で純朴な昔の自分に帰ってみたいというのは、タイムスリップの願望です。将来を知っていて、過去に戻れれば懐かしむこともできますし、人生も二度目なら、恋と同じくもっとうまくやれるかもしれません。
タイムスリップは、人間の技術や知能がいかに発達しても不可能である、とホーキング博士は証明しています。なぜなら、もしそれが可能なら、この世界は未来から観光に来た人たちで溢れているだろうから、ということです。
そんな難しい議論は別にして、もう一回若くなってみたいというのは、小僧世代共通の思いでしょう。石川啄木も、「盛岡の中学校の露台(バルコン)の欄干(てすり)に再一度我を縁らしめ」と歌っています。
もう一度新入社員になりたい、という私の夢は、前回書きましたように、クリーク・アンド・リバー社の井川幸広社長の魔法により、タイムスリップのように実現しました。
60歳の定年まで、毎日満員電車で通勤していれば、それなりの体力は維持されていると思います。通勤ほどよい運動はない、とも言われています。バカを言うでない、とのお説もありましょうが、車通勤は決して健康のためにはなりません。
私の場合、36歳の時から車通勤で、その前の12年間は外国に住んでいましたので、東京のラッシュアワーの体験はほとんどありません。朝早く起きて、私鉄、JR、地下鉄と乗り継いで会社に到達することが、まず大チャレンジです。猛烈に混みあう車内で、どうやってセクハラと疑われないようにするか。それどころか、一つ間違うと、所定の駅で降りられないことすらある。やはり、そこには通勤ノウハウというものがありますね。乗る時間、場所、降りる準備など、これはビジネス同様、知識と経験が活きる世界です。そして時間が経つにつれ、鍛えられていく世界です。
自分自身でも驚いたのは、車通勤が長すぎたので、40年ほど通勤定期券というものを持ったことがない。買い方、使い方がすっかり変わってしまっているので、非常に戸惑いました。それでも、自分の名前の入った定期券を持ったときは、一入の感慨がありました。これでようやく、一人前のサラリーマンだ、という感じです。
何故、このようなばかげた話が続くかというと、これこそが「リセット」だからです。小僧年代の方々は、それなりの地位、実績があります。それを全て捨てて、学校から卒業したばかりの自分になってやってみる、ということです。そんなの簡単だ、と思われるかもしれませんが、どうして、どうして、なかなか大変なのです。
まず、体力がありません。スピード、スタミナ不足はどうしようもありません。新入社員と同じように通勤できますか?と聴かれて、「もちろん」と答えられる人は、あと40年は大丈夫です。ただ、同じように仕事ができますか?と聴かれて「もちろん」と答えられる人は、本当は少ないと思います。理由は、これから説明します。
出勤はしましたが、急に採用されましたので、机がありません。その辺りの空いている席に座ってください、ということになりました。そこにPCが届きました。携帯電話が渡されました。PCとケイタイがないと名刺が作れませんので、という変な説明がありました。私は以前いた会社では、PCも携帯電話も持っていませんでしたし、使い方もわかりません。さて、困ったな・・
この続きは、次回のお楽しみに。
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