仕事を楽しむ
会社をつくるのは簡単だということになっています。自由経済の法治国家で、規制もますます緩和されていますから、誰でも会社がつくれるように、政府もけしかけているようです本当にそうでしょうか。
会社は法人ですから、普通の人と同じように、権利や義務があり、その存在の証明としての戸籍が必要です。それをどうやって作るかは、ものの本にも書いてありますし、弁護士事務所でも、司法書士のところでも、教えてくれます。
もちろん、図書館で調べて、自分でやる場合を別にしますと、それなりのお金がかかります。
登記するのも無料ではありませんし、当然、色々な書類を持ってこいと言われて、それを作らなければなりません。会社をつくるのは、簡単だ、というのは、誰に気がねをすることもないくらいの意味で、実際はきわめて面倒くさく、しかもあとの処理はモット大変なのです。
私の場合、ソニーという大きな会社に勤めていましたから、子会社をつくる、とか分社化する、といいますと、総務部が全部やってくれて、『はいできました』と届けてくれました。会社なんか沢山つくったことがある、と威張っていましたが、実際にはどうやって良いのか全く知りませんでした。
そこで、何をやったかといいますと、会社をつくるにあたり、まず総務の担当を決めてしまおう、と考えたわけです。会社は1人ではできない、仲間が必要である、などといって、誰かにやらせようと考えたわけです。その辺が、間違いの始まりかもしれませんが、自分一人で有限会社をつくるのはどうも、自営業をはじめる、という定義から外れるような気がしたのも、事実です。もちろん、総務担当を決める前にやることが沢山ありました。
私は、ソニーを定年退職する前の数年間、閑職にいましたから、ボランティアで、ベンチャーの支援活動をしていました。その時、よくベンチャーの成功する条件は何でしょうかと聞かれました。本心を言いますと、一に運、二に運、三、四は無くて、五も運ですよね。といいたいところですが、それでは努力も戦略もないことになってしまいますから、イチニイサンシという法則を考えました。1が二つ、3が四つ必要ということで、1X1X3X3X3X3と書きます。
最初の二つは、しっかりした一つの理念及び一つの絶対的独創性です。あとは、三人の仲間、三億円のお金、三年の時間、そして、三十代の年齢です。これは成功の必要条件です。これはすべて掛け算で、どれかが欠落すると成功しません。この条件に合わないベンチャーを始めてはいけないです。もちろん、定年後の起業などは成功しない道理です。
この法則は私が沢山のベンチャーの盛衰を見、また、そもそもベンチャーであったソニーを創業期から体験した中から導き出されたものです。
定年になって、ぶらぶらしそうになった時、一緒に会社をやらないか、という話がきました。その時、私の頭にまず浮かんだのは、この法則です。井深大、38歳でソニーを創業。私は68歳ではたして創業できるか。もちろん、能力も、バックも大違いですが、それはさておいて、原理原則に反するのではないか、ということです。
その時、思いついたのは、これは掛け算である、この条件で悪いのは年齢だけである。それなら、他の条件を改良する、つまり、3人のかわりに、6人の仲間、3億円のかわりに10億円、3年のかわりに10年、かけて、年齢のハンディを克服しよう。そのように考えると、不可能ではないかもしれない。と自分をだますことにしたわけです。
6人集めたら、総務をやってくれる人もいそうですから、会社つくりも難しくありません。ということで、最初から矛盾を含んだ、自分の会社ができることになりました。
理念、独創性は井深大の教えです。他の項目は盛田昭夫の教えといっても過言ではありません。それが具体的にどのようなものであるかは、次回以降にお話しましょう。ただ、このようなことが会社を創る前に必要なのです。会社は社会的な存在で、多数の利害関係者を巻き込みます、失敗したら大変です。会社を始めるまえに、このようなチェックポイントをクリアすべきです。ただ食べていく為、あるいは節税の為、などの理由で会社を創るべきではありません。大きな人間集団をつくって、社会の為に貢献する決意がなければ、決して会社などつくってはいけないと信じています。
会社をつくることは、子供を創ることと同じです。良い子に育てる自信がなければ、決してしてはならないことです。
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