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エンターテインメント

Another life ?もうひとつの生き方としての映画

文=城戸 誠
「もしもあの時この選択をしていたら、或いはしていなかったら? ひょっとして今と違う人生はあっただろうか?あの時代に戻ってやり直せたなら検証することはできるが、人生は一度きり。
だからこそ映画は“もうひとつの人生を見せてくれる”素晴らしいエンターテインメント。有限の人生を、その何倍にも増幅体験できる装置なのだ」

現役の映画プロデューサーとして日々活躍している城戸誠さん。目の前で進行中の作品からは一瞬視線をはずして、ご本人がお気に入りの作品を、映画に携わる者ならではの、ちょっと変わった視点でご紹介します。
120分の Another lifeへようこそ!

#002:「ショーシャンクの空に」

ショーシャンクの空に
「ショーシャンクの空に」
スペシャルエディション
価格:3,980円(税込)
発売元:ワーナーホームビデオ


メディア:映画/上映時間 143分
製作国:アメリカ
ジャンル:ドラマ

サッカーのワールドカップが終わった。
日本代表を指揮したジーコが口にしたキーワードは“自由”。私は彼の就任時に日本人のメンタリティで捉える“自由”と欧米人の考える“自由”は相容れないのではないかと思っていたが、今回の結果を見るにつけ、その考えは正しかったように思える。ゴールを前にして自らの意志で判断し、足を振りぬく“自由”。それを享受することは即ち結果に対する責任もともなう。唯一孤高を守った中田だけが、その本当に意味するところを知った“世界人”であったのかもしれない。

「自由」という言葉には様々な顔がある。だが日々生きている我々が「自由」を意識する瞬間は、極めて少ないのではないだろうか。そこで我々は、映画の中でそのことについて考える機会を得る。

映画「ショーシャンクの空に」はスティーヴン・キングの短編『刑務所のリタ・ヘイワース』の映画化である。昔から塀の中を描いた作品には名作が多いが、本作は、なかでも出色の作品である。
妻とその愛人殺しの容疑で終身刑の判決を受ける銀行マンのアンディ。無実の罪ながら投獄されるが、持ち前の不思議な明るさ故、監獄の中を“活きたフィールド”に変え、そして中にいる人間のメンタリティさえ変容させていく。

いつの時代、どこにいても、程度の差こそあれ人間は生きる上で様々な制約に縛られる。監獄が制約のメタファーであるなら、決して希望を捨てず、自由を得られる明日を信じ続けることは、生きることとイコールである。

自ら前進することを拒む限り塀はただ単に巨大な盾として立ちふさがるが、希望の火を消さない強靭な意思によって塀の中でも前向きに生きられることがアンディによって証明されていく。

本編の中で直接本筋とは関係の無いエピソードとしてブルックス老人という人物が描かれる。実に50年もの服役の末、仮釈放で外の世界に出るが、もはや彼にとっては外界が自分にとっての恐怖の対象であり、ついにはその孤独に耐えられず自死を選ぶ。
「ブルックスここにあり」と書き残し・・・。
彼にとっての“自由”は重たく、冷たいものだったのだ。

一方主人公のアンディは実に20年の後、冤罪を晴らす証拠の糸口をつかむが、あわやというところでまたもそれは“不条理”の壁の中に脆くも埋もれていってしまう。が、そこは言わぬが華、たどり着くラストシーンは見る者の胸をさわやかに、だが強く打つ。
終焉を飾る場面設定は、「自由の先にあるもの」を体現するかのような“海”。不必要とする意見もあるが、私は断じてあのシーンがあるからこそ、この映画の価値が何十倍、何百倍にも増幅されたと確信する。

いつも静かで穏やかだが、内面に強い意志をもち続けるアンディを好演するのは、個性派ティム・ロビンス。独白の形で映画を牽引するその友人レッドに、名優モーガン・フリーマン。監督は『ザ・フライ2』を手がけたフランク・ダラボン。

自由を勝ち取ることにはまた多くの犠牲もともなう。であるからこそ、行き着くまでの精神力は苛酷なほどである。10年、20年、どんな状況下に置かれても希望を絶対に捨てないこと。人生の意味、人間の誇りを教えてくれる秀作だ。

城戸誠(きどまこと)Makoto Kido

映画プロデューサー。

映画界とIT業界を股に架ける(?)迷プロデューサー。エンターテインメントを愛し、ライバルはジェリー・ブラッカイマーと言ってはばからない。いつかはハリウッドに負けない超大作アクション活劇を作るのが夢。


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