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グルメ 「“話のタネ”に食べてみた!!」 〜史上最強!セレブのお取り寄せ〜

第1回「千疋屋のロイヤル・マスクメロンシャーベット 1個1萬伍百円」 文・わぐりたかし 人気のセレブ番組「世界バリバリ☆バリュー」の放送作家わぐりたかしさんが、番組で紹介した“話のタネ”になる超高級グルメ&食材を毎週1つ、プライベートでお取り寄せ。日々の暮らしを楽しむわぐりさんならではの、よくあるグルメ情報とはひと味もふた味も違う、美味しい生活を綴った食エッセイです。

正直に言おう。一週間悩んだ。いかにして食すか…。子供の頃、メロンの形をした薄緑色のプラスチック容器に入ったシャーベットがあった。今もあるかもしれない。メロンのつるの形をした把手付きの蓋を開け、木の匙でシャリシャリと削るように掘り出して食べる。一個50円か60円くらいだっただろうか。あの懐かしのメロンシャーベットが百個、いや二百個は買えるのだ。いかにして食すか…、そりゃぁ、悩む。

千疋屋のロイヤル・マスクメロンシャーベット。桐の箱に入って1万500円。手塩にかけて育てられた静岡産マスクメロンをくりぬき、一番美味しい種の部分の果汁を丁寧に漉す。さらにもう一つ、完熟のマスクメロンを、つるに平行に包丁を入れ半分にカットする。そうすると種のまわりの果汁が流れ出さない。この果肉も漉してジュースを搾る。フルーツは切り方一つ、絞り方一つで美味しさが違ってくる。こうして用心深く絞り出したマスクメロン2個分のフレッシュなジュースを急速冷凍でシャーベットに仕立て上げる。そして器となるメロンに丁寧に戻す。聞けば糖度は奇跡の27度。豊かなマスク(麝香)の芳香と芳醇な味わい、ウルトラスムーズな食感、老舗のエスプリ、季節を問わず喜ばれる逸品である、と高らかに謳っている。贅を極めた贈答品の傑作だ。およそ20年前、クリスマスギフト用に発売され、今ではセレブなお中元やお歳暮として予約販売されている。あの叶姉妹の大好物でもある。

そんなありがたいシャーベットをいったいどうやって食べたものか…、と矯めつ眇めつ眺めているうちに、メロンにまつわる幼い日の記憶がふっと甦ってきた。それは遠い日のメロンジュースの記憶である。

1960年代から1970年代前半にかけて、日本中の街角のいたるところに噴水があった。ジュースの噴水だ。正確にいうと「噴水型ジュース自動販売機」である。映画『スターウォーズ』に出てくるR2D2の頭部のような円みを帯びたガラスケースの中で、冷えたジュースが涼やかに吹き上がっている。紙コップをセットし、10円玉を放り込むと、一杯分のジュースが出てくる。人気だったのは、レモン、いちご、そしてメロンジュース。ビンや缶の自動販売機が登場するより以前のことで、日本人が自動販売機に慣れ親しむきっかけになったのがこの「ジュースの噴水」だった。

当時、ボクの父はその噴水型ジュース自動販売機のリース業をしていた。映画館や遊園地を中心に自動販売機を置き、定期的にジュースの原液を補充、メンテナンスを施し、コインボックスから山のような10円玉を集金回収していた。多摩川園遊園地、二子玉川園、向ヶ丘遊園、横浜ドリームランド…、今はもうどこも廃園になってしまったそうした遊園地のあちこちにジュースの噴水が吹き上がっていた。父はよくボクを三輪トラックの助手席に乗せて連れて歩き、帰りに少しだけ閉園間際の遊園地で一緒に遊んだ。父がそうした仕事をしていた関係で、幼い頃、家にはいつもジュースの原液が入った一升瓶が何本も並んでいたのだが、友達が遊びに来ると父は喜んでその一升瓶をお土産で持たせたものだ。中でも人気だったのが、もちろん、メロンジュースだった。

メロンといえば千疋屋、千疋屋といえばメロン。恥ずかしながらその「千疋屋」と名乗る高級フルーツ専門店が3つの系統に分かれていることを、ごく最近になるまで知らなかった。3つとは「千疋屋総本店」「銀座千疋屋」、そして今、目の前にあるシャーベットの製造元「京橋千疋屋」である。いずれも完全に別会社。元をたどれば、武蔵の国埼玉群千疋の郷(現在の埼玉県越谷市東町)で槍術の指南をしていたという大島弁蔵が商いを始めた「千疋屋弁蔵」にたどり着く。後に「千疋屋」と愛称で呼ばれ、そのまま屋号となった。銀座千疋屋も京橋千疋屋も総本店からの暖簾分けである。京橋千疋屋の創業は1881年(明治14年)、暖簾分けの店も既に120余年の歴史を誇る。

覚悟は決まった。

シャンパンに浮かべてカクテル仕立てにする。超高級メロンソーダだ。グラスにシャーベットを盛り、シャンパンを注ぐ。美しくきめ細かく上品に弾ける泡が、マスクの芳醇な香りを辺りに漂わせる。シャリシャリとそれでいて滑らかな舌触りのシャーベットが、ひたひたと黄金のシャンパンに浮かんでいる。メロンをメロンとしてそのまま食べるより、メロンそのものの味が凝縮して伝わってくる。なんという贅沢。美味い。だがちょっと悪戯心がひょいと鎌首を持ち上げた。そうだ、メロンソーダにさらにバニラアイスを載せてみよう。どうだ、大人のクリームソーダの出来上がりだ。

昭和の街角でジュースの噴水を見上げていた子供の頃のボクが見たら、いったいなんと言うだろうか。

シャンパンに浮かべてカクテル仕立たメロンソーダ。
シャンパンに浮かべてカクテル仕立たメロンソーダ。

協力:世界バリバリ☆バリューの本「史上最強!セレブのお取り寄せ」
  (アスコム刊 大好評発売中)

関連情報

京橋千疋屋 http://www.senbikiya.co.jp/
ロイヤル・マスクメロンシャーベット
店頭価格:10,500円 (税込、送料別)
東京都中央区京橋1-1-9 03-3281-0300

美食の王様 スイーツ―絶対おいしい169店 厳選の380種 ▽わぐりたかしプロデュースの本
『美食の王様 スイーツ−絶対おいしい169店、厳選の380種』(筑摩書房刊)
「王様のブランチ」などテレビや雑誌で大活躍、AllAbout食べ歩きグルメガイドとしても活躍中、26才の食べる天才“美食の王様”こと来栖けいの最新作。史上最強のスイーツ・ランキングです。

わぐりたかし

わぐりたかし Takashi Waguri

放送作家。
超ゴージャスなセレブ番組「世界バリバリ☆バリュー」(TBS)から、その対極にあるスローライフな雑誌「ソトコト」のTV版「ハッピー!ロハス」(BS朝日)まで幅広い番組を担当。今話題の"美食の王様"来栖けい、築地王B級グルメ王ヤキニクエスト東京カリ〜番長をはじめ、グルメ雑誌編集長や人気フードライターなど飲食業界で活躍する知己に恵まれ、超A級三つ星クラスから庶民派B級グルメまで美味しいモノの情報には事欠かない。汐留名物「汐留らーめん」の発案者であり、「日本フードジャーナリスト会議」を主宰。「野ブタ。をプロデュース」「愛の流刑地」などのドラマ企画も手がけ、出版プロデューサーとしても活躍中。

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