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グルメ 「“話のタネ”に食べてみた!史上最強 セレブのお取り寄せ」

第10回 幻の高級辛子明太子、あき津 (あきづ)の「天」 四腹 一萬八千円  文・わぐりたかし 人気のセレブ番組「世界バリバリ☆バリュー」の放送作家わぐりたかしさんが、番組で紹介した

さて、四腹(8本)18,000円とは、つまり一本、2,250円である。

日本一の高級明太子とはいかなるものなのか、たまにはぶつぶつ言わずに、さっそく一口食べてみる。すると皮が弾けたときの食感にまず驚いた。喩えていえば、海岸線に押し寄せて砕けた波が、すーっと引いていく波打ち際のように、明太子の無数のつぶつぶがしゅわしゅわっと跳ねるように口の中に広がっていって実にかろやか。そしてそのプチプチとしたつぶつぶをそっと噛むと、こんどは、ふわぁっと卵のエキスがしみ出してくる。はじめての体験だ。明太子というと着色料で真っ赤に染められ、舌が痛くなるくらいぴりぴり辛いものだという先入観があるが、いやいやどうして、この明太子は見た目も味も実に繊細で、上品で奥行きがある。白飯があればあったで旨いが、ごはんなどなくても、これだけでいくらでも食べられる。皿の上にキレイに盛りつければ、コース料理のメインディッシュにもなりうる一品だ。いったいどんな秘密があるのだろうか、尋ねてみた。すると驚くことばかり…

「だらしのない明太子が多いことに愕然とした。」
博多の一匹狼、あき津" (あきづ)の社長、安田樹生(やすだみきお)は、はじめて東京で明太子を食べたときに激しい衝撃を覚えたという。どぎつく赤く染められ、クスリ臭く、ひりひりと辛いだけの明太子が、博多名物として大手を振って売られていることに怒りさえ感じた。誰よりも博多を愛しているからこそ、許せないと思った。だがそれは東京だけのことではなかった。地元の名産品が全国展開していく中で、味も製法もいつのまにか大きく変わっていたのだ。明太子が明太子でなくなっていた。安田はそれを知って愕然とした。ならば、自分が納得いく本物の明太子を作ろう。日本一の明太子を作ろう。それが、あき津"の出発点であり、安田の明太子作りの大きなモチベーションとなった。

今や博多明太子界の革命児として知られる安田だが、実は明太子専業メーカーとなったのは、わずか3、4年前のことに過ぎない。大学で経済を学んだ安田は、事務機メーカーの営業を経て、九州の銀行がオンライン化された時期に独立。当時、まだ電算機といっていたコンピューターの電源装置を商う会社を興して軌道に乗せた。その一方で、57歳で会社を譲ることを心に決めていた。夢があった。旨い料理を出す自分の店を開きたい…。やがて心に決めていた57歳になった時、きっぱりと会社をゆずり、1年間の準備期間ののち、とうとう長年夢に描いていた小料理屋を博多駅前に開いた。もともと地元では食通として知られ、グルメの会などを主催していた安田だが、仕事をやめて店を出すと聞いた友人たちは口をそろえて、失敗するからやめておけと忠告した。だがしかし安田は、夢を実現させることを選んだ。自分の人生、後悔はしたくなかった。幸い、店は繁盛した。だが冒頭に書いたように、安田は重大なる明太子問題に直面した。市販の明太子を使ったのでは、自信を持って明太子料理を出せない。結論はおのずと明らかだった。自分が納得する明太子は自分で作る。それが高じて、今、店を後輩にゆずり、明太子職人となったのだから、人生は面白い。

では、あき津"の明太子は何が違うのか。答えは意外とシンプルだった。「出汁が違います」。博多に明太子を扱うメーカーは300社あるが、その多くが既製品の出汁を調達している。もちろんあき津"は違う。出汁の秘密を聞いた。たっぷりの利尻昆布と枕崎の鰹節でとった出汁に、創業江戸文政年間の酒蔵、喜多屋(八女市)が造る最高級の酒みりん、創業天保三年、銘酒「庭の鶯」で知られる山口酒造場(久留米市)があき津の明太子用に特別に醸造した純米酒、さらに浜田醤油(熊本)の本醸造醤油を加えて、無添加で安心なオリジナルのタレを作る。そしてタレが直接たらこにからないように注意しながらかけて浸し、一週間じっくり冷蔵庫で寝かせる。現在、一般的に出回っている明太子は、このタレにも唐辛子を漬け込むので辛味が強く前面に出すぎるが、あき津の明太子は唐辛子をタレには漬け込まず、一週間寝かせた後にぱらぱらと上から振りかける。唐辛子は風味のいい京都産を取り寄せている。辛子の粒子が、たらこの粒より小さいものを探して選んだ。そのため食べたときに、辛味より、まず、たらこそのもの旨味が広がって、あとから少しずつ辛味がついてくる。なるほど、上品な味わいの秘密がわかった。そうだ、言わずもがなだが、ベースとなるたらこは、粒がしっかりと詰まっているとびっきり上等な完熟の真子を仕入れている。

ところで、安田社長の奥方がこっそり教えてくれた話がある。最近、夫の小学校の卒業文集を発見して驚いたという。そこには、将来の夢が書かれていた。その夢とは…
<大人になったら水産加工業がやりたい>
「きっと本人も忘れていると思いますけど、夢だったんですね」
ずっと安田を支えてきた糟糠の妻は、そう言って微笑んだ。

ごはんの上に明太子

明太子のアップ



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関連情報

柿のシンデレラ「太秋」あき津" (あきづ)
幻の高級辛子明太子「天」
価格 18,000円(税込)
Tel:092-672-6005
「天」は、注文を受けてから極上のたらこを仕入れて安田社長が手作りするので、届くまでに1〜2週間かかることもある。ここ1、2年、近海モノのたらこの質が急激に落ちているので、国産にこだわらず、最新鋭の機材を搭載しているアメリカ船団のたらこなど、質を重視して、とびっきり上等なものを仕入れている。「天」の器は、特注品のわっぱで、三百年の伝統を誇る博多曲物師、柴田徳五郎作。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
▽創業江戸文政年間の酒蔵
喜多屋」(福岡県八女市)
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▽創業天保3年”庭の鶯(うぐいす)”で知られる
山口酒造場」(福岡県久留米市)
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▽”卵かけごはんにかける醤油”でもおなじみの老舗
浜田醤油」(熊本県熊本市)


わぐりたかし

わぐりたかし Takashi Waguri

放送作家。
超ゴージャスなセレブ番組「世界バリバリ☆バリュー」(TBS)から、その対極にあるスローライフな雑誌「ソトコト」のTV版「ハッピー!ロハス」(BS朝日)まで幅広い番組を担当。今話題の"美食の王様"来栖けい、築地王B級グルメ王ヤキニクエスト東京カリ〜番長をはじめ、グルメ雑誌編集長や人気フードライターなど飲食業界で活躍する知己に恵まれ、超A級三つ星クラスから庶民派B級グルメまで美味しいモノの情報には事欠かない。汐留名物「汐留らーめん」の発案者であり、「日本フードジャーナリスト会議」を主宰。「野ブタ。をプロデュース」「愛の流刑地」などのドラマ企画も手がけ、出版プロデューサーとしても活躍中。


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