「“話のタネ”に食べてみた!史上最強 セレブのお取り寄せ」

たまにはテレビの話でも。
TVグルメ史的には現在、"大間のマグロ時代"の、まっただ中だ。それ以前は、"ラーメン時代"だった。ボクもちょっとお手伝いさせてもらったが、2002年大晦日の晩に放送された日本テレビの5時間スペシャル『史上最大!全国民が選ぶ美味しいラーメン屋さん 列島最新ベスト99』がラーメン時代のピークで、年が明けて2003年1月、今も人気シリーズとして続くテレビ朝日のスイスペ『マグロに賭けた男たち!一兆円市場の舞台裏密着』が思わぬ高視聴率を獲得したあたりから、主役はラーメンから大間のマグロにとって代わった。振り返ってみると、バブル崩壊以来、気の遠くなるような長い下り坂となったデフレ経済の終焉と、この主役交代劇がほぼ時期を同じくしているのが興味深い。2007年正月には、スイスペにヒントを得て企画された制作費10億円の新春ドラマ『マグロ』(テレビ朝日、渡哲也主演)が2夜連続で放送されるが、これは1983年に公開された映画『魚影の群れ』(吉村昭原作、相米慎二監督、緒形拳、夏目雅子ほか)以来、実に24年ぶりの大型マグロ劇だ。おっと…やけに文章に数字が多いが、気にせず先に進む。
2001年1月5日、"大間のマグロ時代"到来を予感させる事件があった。
築地市場の初セリで、202kgの近海本マグロが、それまでの史上最高値1本904万円を大きく上回る、キロ10万円、2020万円で競り落とされニュースになった。この一件で、本州最北端、下北半島「大間」という町の名前が高級ブランドとして認知され、脚光を浴びることになる。青函トンネル建設の影響か、大間のマグロは1975年前後を境に魚影が薄くなり、水揚げが激減していたのだが、これで完全復活を日本中にアピールした。ちなみに漁師が腕一本で数百キロのマグロに挑む大間沖の漁は、以前は7月から10月ごろにかけてだったが、最近では年を越して1月になっても水揚げされている。地球温暖化の影響ではないかともいわれているが、また、いつ、魚影の群れが消えてもおかしくはない。
さて、初セリで2020万円という破格の値段がついた大間のマグロを手に入れたのは、自称「マグロと結婚したマグロ馬鹿」、東急目黒線 奥沢駅前の寿司店「入船」の大将、本多克己(65歳)だ。このときばかりではない。一年中どんなときでも、その日一番のマグロは、本多が何がなんでも手に入れる。客単価が3万も4万もする気取った銀座の有名店ではない。高級住宅街として知られる田園調布がほど近いとはいえ、店の作りも内装もいわゆる街場の寿司店だ。とびっきりのネタを仕入れたからといって強気の商売をするわけにはいかない。実際、2020万円のマグロは、あとで計算すると一貫握るたびに1000円の赤字だったという。ではなぜ、そこまでして最高のマグロを手に入れるのかと聞いたことがある。答えはシンプルだった。
「マグロが好きだからです。日本で一番のマグロを握っていると思うとそれだけで、毎日、幸せなんです。マグロ以外、なにも趣味はありませんし、お小遣いも全部、マグロにつぎ込んでます」
けっして口だけではない。1968年に27歳で独立開業して以来、毎日午前11時から夜の10時まで休憩なしの通し営業。おまけに年中無休で元旦も店を開けている。15歳で見習いに出た修行先の店もやはり年中無休だったというから、実に半世紀ものあいだ、本多は付け場に立ちっぱなしでマグロと格闘していることになる。好きだからこそだ。ちなみに今や日本全国どこでも見かけるようになった「大トロの炙り」や「トロタク」は、本多の発明品だ。大トロの炙りに関しては、銀座の有名店から、極上のネタである大トロを炙るなんて邪道だなどと陰口を叩かれたりもしたが、今ではその銀座の店でも出すほどポピュラーなメニューとなっている。ただのウケ狙いではなく、マグロが好きで好きで好きだったからこそ、世に送り出すことができたマグロ料理の金字塔だ。
よし、それじゃ、大将にあやかって、炙ってみるか!
みんなにマネされるようなテレビ版"大トロの炙り"を生み出さなくっちゃ。
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「入船」主人・本多克己(写真提供:美食の王様☆来栖けい) |
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入船「珠玉のあぶり3点盛り」(4,725円) |
協力:世界バリバリ☆バリューの本「史上最強!セレブのお取り寄せ」
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