「“話のタネ”に食べてみた!史上最強 セレブのお取り寄せ」

実は、ずっと、うらやましく思っていた。
ある世代以上の人たちが「バナナって、昔は病気の時にしか食べられない高級品だったんだよ」と語るのが、とにもかくにもうらやましかった。自分たちは戦後、何もない貧しい時代から一生懸命働いて今の日本を作ったんだぞという自負と、高度経済成長期以前を懐かしむ「ALLWAYS三丁目の夕日」的な昭和回顧趣味が見え隠れして、ときにはうらやましさを通り越して、バナナ1本で世代的な負い目すら感じてしまうことすらある。かつて千疋屋総本店の一番奥で、マスクメロンではなく、輸入バナナが一番の高級贈答品として大切に売られていた東京オリンピック以前の記憶を持つ世代が、やけにきらきら眩しく見えたりもする。だがしかしそんなボクにも、一発大逆転、将来「バナナは高級品だったんだぞ」と言って三丁目の夕日族の仲間入りをすることができる千載一遇のチャンスが訪れた。10本で6300円、世界一高価なフィリピン産超高級バナナがわが家に届いたのだ。
さぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。
デッカイ!それが第一印象。てっきり立派なバナナが1房、籠にでも入ってくるのだと勝手に思っていたのだが、1本ずつ丁寧にラッピングされたバナナが10本、黄色と黒のシックな箱に収められて届いた。ふつうのバナナよりひとまわり、いや、ふたまわりは長くて極太だ。さてここで、いきなりスルリと皮をむいて食べてもいいのだが、いやいやちょっと待った。このバナナがいかにありがたいのかを確認するために、散歩がてらバナナの市場価格調査に出かけることに。まず、近所のコンビニでエクアドル産とあるラッピングされたバナナが1本90円。スタバのレジ脇に置いてある売る気があるのかないのかむきだしで産地不明のバナナは1本80円。日本中はもとより世界中から選りすぐった逸品が集められている日本橋千疋屋総本店をのぞいてみると、何万円もするマスクメロンやとびっきり上等な季節のフルーツが並ぶ小洒落た新店舗の片隅に、1本ずつラッピングされたバナナがひっそりと…。1本105円のエクアドル産と、台湾の品種をより理想的な気候のフィリピンで育てたという仙人バナナが1本210円。とまぁ、天下の千疋屋がどんなにガンバったって、せいぜいこの値段なのだということがわかった。ところがその千疋屋の3倍、1本630円、10本で6300円だというのだから、これはもう「そんなバナナ…」と、今じゃそれを口にしただけで周囲が凍りつく古典的な駄洒落が思わずポロリと出たとしても許されるに違いない。
さてそのバナナの正体は…。
フィリピン、ミンダナオ島アポ山(標高3144m)の中腹、標高800m地点で栽培された高原バナナ、それが「アポ山スーパー800」だ。そう、名前の「800」は、標高を意味している。国立公園にも指定されているアポ山は、昨年暮れ、知人の世界的登山家、田部井淳子さんが登頂していたが、うっそうとした熱帯雨林で覆われていて、滝や洞窟、急流の川などダイナミックな大自然と、火山の噴火でできた水はけのいい肥沃な土壌が特徴だ。現地まで足を運んだフルーツショップのオーナーによると、農園はまんべんなくバナナに太陽があたる斜面にある。標高が高いため直射日光は強烈だが、吹き抜ける風は涼しい。眼下に広がるダバオ湾から吹き上げてくる風と山から吹き下ろす風がぶつかり合い、適度な湿度をつくりだしている。最高気温は、やはりバナナ農園が広がる麓に比べて年間を通じて5℃ほど低く、熱帯にもかかわらず一日の最低気温が18℃くらいに下がることもあるという。そのため低地だと約10ヵ月で育つバナナが、じっくり14ヵ月も樹の上にとどまって成育することになる。するとどうなるかというと、自然の恵みをたっぷり受けて、手間と時間をかけた分だけ、より多くのデンプンが実に蓄えられ、甘みと栄養価がぎっしり詰まった美味しいバナナになる。ちなみに同じ種類の一般的なバナナは、長さ18cm、重さ140gといったところが平均的なサイズだが、アポ山スーパー800は、長さ23cm、重さ240gと特大だ。それだけではない。そうしてじっくり栽培したバナナの中でも状態のいい房を選んで、大きくて美味しい中央の1〜2本のみを厳選してカットしている。それが10本。バナナのエリート中のエリート集団なのだ。
そこで今回、敬意を表して世界一のチョコバナナにしてみることに。
まずはその前にストレートでいただく。たしかに濃厚で甘みが強いが、しつこい粘りけはなく、さっぱりとした上品な後味だ。さあ、そしてこのときのために用意した世界最高峰のショコラティエ、ジャン=ポール・エヴァンのタブレット(板チョコ)"EQUATEUR(エクワトール)"を湯煎でとろりと溶かして、カットしたバナナをからめてパクッ! エクアドル産の上質なカカオを使った気品溢れるショコラのダークな苦味と甘みが、バナナのしっとりと濃厚な甘みとマッチして、♪デーォ!イデデ〜オ! Daylight come and me wanna go home! と思わず、三丁目の夕日時代、「カリプソの女王」と呼ばれた浜村美智子がカバーして大ヒットしたハリー・ベラフォンテの『バナナボート』(1956年)を口ずさんでしまうほど、浮かれた気分になる。史上最強、大人のチョコバナナだ。
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ふつうのバナナと並べてみると…いやぁ、デカイ! |
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史上最強のチョコバナナ(アポ山スーパー800+ジャン=ポール・エヴァン) |
協力:世界バリバリ☆バリューの本「史上最強!セレブのお取り寄せ」
(アスコム刊 大好評発売中)
関連情報
◆三木果物店(大阪市)最高級バナナ「アポ山スーパー800」
◆ジャン=ポール・エヴァン(東京・新宿伊勢丹)
「タブレット」(板チョコ)2枚入 2,520円
◆ハリー・ベラフォンテ「ベスト・オブ・ハリー・ベラフォンテ」
◆浜村美智子
「バナナボート」









