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グルメ 「“話のタネ”に食べてみた!史上最強 セレブのお取り寄せ」

第26回 洋菓子のエルメス!アンリ・シャルパンティエ「ガトー・ロワイヤル」一萬万六千八百円
文・わぐりたかし 人気のセレブ番組「世界バリバリ☆バリュー」の放送作家わぐりたかしさんが、番組で紹介した“話のタネ”になる超高級グルメ&食材を毎週1つ、プライベートでお取り寄せ。日々の暮らしを楽しむわぐりさんならではの、よくあるグルメ情報とはひと味もふた味も違う、美味しい生活を綴った食エッセイです。

アンリといえば?
と妻に尋ねると、返ってきた答えは「フィナンシェ」だった。以前なら100%、杏里の大ヒットナンバー「オリビアを聴きたくて」と答えたはずだ。ちなみに、10年前、20年前のボク自身に同じ質問をしたら、ちょっと気どって「アンリ・カルティエ=ブレッソン」と答えるに違いない。ライカ片手にスペイン内戦前夜やパリ解放など、決定的瞬間を撮った報道写真の先駆者で、同時に写真を芸術の粋にまで高めた偉大なるカメラマン。マリリン・モンローやココ・シャネル、トルーマン・カポーティ、サルトルとボーヴォワールといった20世紀の顔をフィルムに収め、一方で、パリの息づかいを写し続けた。カフェでカップルがキスしている写真や、サン・ラザール駅で紳士が水たまりを飛び越えようとしている写真が有名だが、まさに一瞬で人生を切り取る天才芸術家だ。彼の写真にインスピレーションを受けて、番組を企画したこともある。月日は流れ、もともと画家志望だったアンリ・カルティエ=ブレッソンは、晩年、デッサンとスケッチに熱中し、2004年、95歳でその生涯に幕を閉じた。妻が大好きだった杏里は、2005年、世界的ジャズギタリスト、リー・リトナーと結婚して世間を驚かせた。そして今、わが家でアンリといえば、「アンリ・シャルパンティエ」だ。

アンリ・シャルパンティエの16,800円のケーキ、ガトー・ロワイヤルを知っているか!?
ある日、ショコラクラブ・ジャポンの会員で、東京スイーツ倶楽部のメンバーでもある知人からメールが舞い込んだ。これまで、鎌倉山にあるホルトハウス房子のチーズケーキ12,600円が高級ケーキ界の頂点に君臨していたが、ついにそれを超えるケーキが登場したかとにわかに色めきだった。取り寄せはできないというが、なに、今回は番外編だ。

アンリには、いつも、思いがけないサプライズがある。
世界で活躍する和紙デザイナー、堀木エリ子による手漉きの和紙で作られたドーム状のギフトボックスを開けると、おや、中からまた、真っ赤なリボンがかかった四角いギフトボックスが…。と思ったら、ちょっと待った。よく見るとギフトボックスは、リボンも、そしてラッピングの包装紙も、ケーキの一部だ。銀座本店の女性パティシエによると、リボンは、ラング・ド・シャ(猫の舌)と呼ばれる、薄く細長く棒状に焼いたクッキー。華やかに金箔がスプレーされ、補強のため、裏側がチョコレートでコーティングされている。折り目までついていて、包装紙かと見紛うばかりのケーキ本体の表面も、これまたクッキー生地だ。チョコレートで線が描かれ、アーモンドやピスタチオ、さらにフランボワーズのシロップで炊いたピスタチオや、銀色のアラザンでデコレーションされている。

さてさてと、カットしてみる。
中は、チョコレートケーキ。ショコラ生地は、フランス・ヴァローナ社の最高級ブラックチョコレート、カカオ分70%の「グアナラ」を使用。世界の一流シェフ御用達でもあるグアナラは、チョコレート特有の力強く濃厚な風味と苦味、それにわずかな酸味が特徴だ。フランス産のフルーティーなはちみつと、イタリア産のピスタチオペーストを練り込んで、大粒のアマレナチェリーを入れて焼き上げている。はちみつは、19世紀から4代にわたって養蜂業を営むブルゴーニュ地方の老舗、アピディス社のフルール・プランタニエール。菜の花をベースに果物の木々、セイヨウサンザシなどの蜜が自然と混じり合ってできている。花とフルーツの風味、そしてこちらもまたわずかな酸味がある。 焼き上げた生地の底には、フランボワーズジャムを塗ったショコラサブレを敷き、まわりはチョコレートで覆っている。さらに、フィユティーヌ、プラリネ、ミルクチョコレートをあわせたサクサクとした食感のチョコレートが生地の上部をカバーしている。 どれどれと一口。すると、力強く濃厚なショコラの甘みと苦味、アマレナチェリーやフランボワーズの甘酸っぱさが同時に押し寄せてくる。しっとりサクサク、サクサクしっとり。なるほど、深みのある大人の味だ。特別な日の特別な贈り物にふさわしい。アンリの創業者、蟻田尚邦(現在、ブランド戦略と商品開発に特化した別会社クールアースの社長)によると、贈り物としてプレステージ感のあるアンリ・シャルパンティエのシンボルのようなケーキはないのか、というリクエストに応えて作ったという。

その蟻田から、意外な話を聞いた。
2001年、彼は、ある市場調査の結果を見て絶句したという。年商100億を稼ぎながら、アンリの東京での知名度はゼロ。おまけに、地元関西での知名度は高いものの、既に過去のブランドになっているというのだ。まさか…。蟻田は焦った。日本に上陸しては消えていった数多くの海外ファッションブランドを見てきた。80年代に一世を風靡したデザイナーズブランドも、ほぼ全滅していた。ジャンルは違えど、ブランドの盛衰は他人事ではない。蟻田は、アンリの経営から退き、商品パッケージや店舗デザイン、商品開発を軸にブランドの再構築に専念することにした。めざすは、洋菓子界のエルメス、ルイ・ヴィトンだ。しっかりとした高い技術に裏付けられた物作りを原点に、その時代時代のデザインを表現していく。生き残りを賭けたチャレンジが始まった。

蟻田は、旅に出た。
パリ視察旅行中の宿「オテル・ド・クリヨン」で出会ってその味に感激したパティシエ、クリストフ・フェルデールに技術指導を求め、2002年、現地に商品開発のラボラトワール(研究所)を開設、原点に立ち返って本場パリの味を探求した。またその一方で、銀座柳通りにあるロマネスク様式の歴史的建造物に目を付け、2003年、本格的な東京進出を企てる。内装は、蟻田がパリの街角で見かけて飛び込んだモダンでセンスのある4ツ星プチホテル「ヴィクトワール・オペラ」の建築デザイナー、ジャン=フィリップ・ニュエルに任せた。そして、パリのアパルトマンを彷彿とさせるこの銀座店のオープンを機に、フェルデールの新作スイーツを「パリ・コレクション」としてシーズン毎に発表。店舗デザインから包装、接客サービス、従業員の髪の長さや使用するペンに至るまで、統一感のあるブランドイメージを打ち出した。アンリでケーキを買うことそのこと自体を楽しんでもらう。蟻田の読みは当たった。かくしてアンリは、フランスのリアルな今の空気を感じることができる高級感あふれるブランドとしての地位を獲得、首都圏での知名度を一気に高めた。16,800円のガトー・ロワイヤルは、そうした流れの中でおのずと誕生した本物志向のアンリブランドのシンボルなのだ。

アンリの本物志向を語るには、「22万円のイス事件」が象徴的だ。
銀座の店舗デザインについて、蟻田がパリで打ち合わせをしていたときのこと。現地で、サロンにぴったりの理想的なイスを見つけた。日本円にして1脚22万円。必要なのは10や20ではない。まとめると、輸送費も含めて相当な金額になる。日本から同行した施工業者は、5万円で同じようなイスを作ることが出来ると提案した。蟻田は迷った。がしかし結局、22万円のオリジナルを選んだ。
「お菓子の世界はいくらでもマネできる世界なんですよ。でも、よそが洋菓子に抹茶や小豆を使ってヒットしていても、うちはやらない。マネしたい誘惑にかられるけれど、絶対やらないと肝に銘じている。もしも5万円でコピーのイスを作ることを選んだら、あぁ、この会社はマネする会社なんだと、社内で思われてしまうでしょ。でも、うちはマネはしない。10年、50年、100年たっても新しいといわれる本物をめざしているんです」

後日、カメラ片手に銀座店を訪ね、アンリ・シャルパンティエの決意の表れともいえる22万円のイスを写真に収めた。だが、帰ってからふと気がついた。アンリ・カルティエ=ブレッソンなら、蟻田をそのイスに座らせてポートレートを撮っただろうと。彼には、よく知られた名言がある。
「写真はなにものでもない。私が興味を覚えるのは人生だ」
同感だ。だが、まだまだボクは、どちらのアンリの足下にも及ばない。


和紙製のパッケージ。中からリボンがかかった四角いギフトボックス=ケーキがあらわれる!

和紙製のパッケージ。中からリボンがかかった四角いギフトボックス=ケーキがあらわれる!

リボンはラング・ド・シャ(猫の舌)!もちろん食べられます。

リボンはラング・ド・シャ(猫の舌)!もちろん食べられます。

 断面図

断面図

 1930年(昭和5年)に建てられた銀座を代表するロマネスク建築のビルをコンバージョン!

1930年(昭和5年)に建てられた銀座を代表するロマネスク建築のビルをコンバージョン!

 ジャン=フィリップ・ニュエルがデザインした店内には、パリの風が!

ジャン=フィリップ・ニュエルがデザインした店内には、パリの風が!

 地下サロンのイス。蟻田はオリジナル(1脚22万円)を選んだ!

地下サロンのイス。蟻田はオリジナル(1脚22万円)を選んだ!




協力:世界バリバリ☆バリューの本「史上最強!セレブのお取り寄せ」
  (アスコム刊 大好評発売中)


関連情報

ガトー・ロワイヤル
アンリ・シャルパンティエ
「ガトー・ロワイヤル」 ¥16,800円 (サイズ:17×17×5cm)
アンリ・シャルパンティエ銀座本店(中央区銀座2)とメゾン アンリ・シャルパンティエ(芦屋)の2店舗限定予約販売。3日前までに予約が必要です。
銀座本店:東京都中央区銀座2−8−20 ヨネイビル 1F・B1 
TEL 03(3562)2721

メゾン アンリ・シャルパンティエ
兵庫県芦屋市楠町10-17
TEL 0797(23)8181

◆ホテル「ヴィクトワール オペラ」
建築デザイナー、ジャン=フィリップ・ニュエルが手がけた4つ星プチホテル。


アンリ・カルティエ=ブレッソン (フランスの写真家、1908〜2004)
ドキュメンタリー映画「アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶」(2003、日本公開2006、DVD2007.4発売)

東京スイーツ倶楽部
わぐりたかし

わぐりたかし Takashi Waguri

放送作家。
超ゴージャスなセレブ番組「世界バリバリ☆バリュー」(TBS)から、その対極にあるスローライフな雑誌「ソトコト」のTV版「ハッピー!ロハス」(BS朝日)まで幅広い番組を担当。今話題の"美食の王様"来栖けい、築地王B級グルメ王ヤキニクエスト東京カリ〜番長をはじめ、グルメ雑誌編集長や人気フードライターなど飲食業界で活躍する知己に恵まれ、超A級三つ星クラスから庶民派B級グルメまで美味しいモノの情報には事欠かない。汐留名物「汐留らーめん」の発案者であり、「日本フードジャーナリスト会議」を主宰。「野ブタ。をプロデュース」「愛の流刑地」などのドラマ企画も手がけ、出版プロデューサーとしても活躍中。


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バックナンバー

#026
アンリ・シャルパンティエ「ガトー・ロワイヤル」 1個 一萬万六千八百円

#025
サミュエルアダムス「ユートピア」 1本(710ml) 一萬七千円

#024
ハチミツの高級ブランド「HACCI1912」小瓶40g 三千九百円

#023
幻のいちご「ももいちご」 1粒 千二百五拾円

#022
りんごの王様「冠雪の実 蜜の宝」1個 二千円 

#021
日本一のかめびし醤油「古醤油 十歳造」1本 180ml 五千四拾円

#020
中村藤吉ぼんぼにえーる 一箱8粒入 三萬壱千五百円

#019
鉄麺-iron noodle- 1人前 一萬五百円

#018
大黒屋総本家「幻の大田原牛」1枚 約180g 六萬三千円

#017
紫野和久傳「すっぽんの煮こごり」 1個 八千四百円

#016
幻のオリーブオイル「アウボカーサ」 1本 六千三百円

#015
最高級バナナ「アポ山スーパー800」 10本 六千三百円

#014
幻の「間人(たいざ)ガニ」 1杯 二萬五千円

#013
大間産 「本マグロ」 大トロ1kg 拾萬円(時価)

#012
水のドンペリ「シャテルドン」 1リットル 千八百円

#011
黄金のアジの干物「鯵小判」 1枚 四千四百拾円

#010
幻の高級辛子明太子、あき津 (あきづ)の「天」 四腹 一萬八千円

#009
柿のシンデレラ「太秋」 1玉 二千五百弐拾円

#008
京都・緑寿庵清水の金平糖「華やか」 1箱 一萬八千九百円

#007
梨の王様「新高梨」 1個 六千円

#006
紀州五代梅本舗「甲申年の梅 五福」 1粒 三千百五拾円

#005
王室御用達「エシレのバター」 2個セット 四千九百八拾七円

#004
米のロマネコンティ!天空米(てんくうまい) 5kg 一萬円

#003
仏蘭西焼菓子調進所 足立音衛門「栗のテリーヌ・天」1本 1萬円

#002
リスドォル・ミツの高級無添加食パン「ブラビッシモ」1本 五千円

#001
千疋屋のロイヤル・マスクメロンシャーベット 1個1萬五百円