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グルメ 今月の一本

「菊正宗」文=港信之 日本でも有数のソムリエとして、また一流バーテンダーとして、お酒に対するこだわりを持ち続ける港信之さんが、ワイン、日本酒、シングルモルト、焼酎など毎月ひとつのブランドや銘柄を選び、一流のブランドや人気の銘柄を支える作り手たちのこだわりを伝えます。

9月といえば、9月9日の重陽の節句。
重陽の節句の起源は、他の節句と同様に古来の中国に由来します。中国では、奇数は縁起の良い“陽”の数とされ、その中で最も数の多い「9」が重なる9月9日を「重陽」とし節句の一つとしてきました。
中国ではこの日、邪気を祓い長命を願うために「しゅゆ」(ぐみの実)を身につけ丘や山に登ったり、菊酒(菊の香りをつけた焼酎に近いもの)を飲んだりした習慣がありました。
これが日本に伝えられたのは平安時代とされ、宮中における節句の一つとしてされています。江戸時代、武家社会では祝日となっていたそうです。
中国では菊の花には不老長寿の薬としての信仰があり、薬用(漢方薬)として今も薬効が認められ使用されています。日本では室町時代には食材として使用されていたそうで、平安時代に観賞用もしくは薬用として中国より入ってきたとされています。
日本で菊といえば皇室の「菊の御紋章」。宮中で使用されるお酒には様々なものがありますが、皆様が知っている、春、秋の園遊会や宮中晩餐会に使用される日本酒は、春は桜正宗、秋は菊正宗となっていました。

日本のお酒には、イギリスのようにロイヤルファミリーの紋章や〇〇御用達などの標記が認められなくなりました。ここまで知名度がある桜・菊正宗は、逆に知名度による誹謗中傷がかなりあり、味わってみたことのない人でさえ「大手のお酒は・・・」と敬遠することもあるようです。ラベルに御用達の文字が入れられたら、この誹謗中傷は消えるのではないでしょうか。日本人に自分の鼻舌ではなく、周りからの声耳で味わってしまう方々が多くいるのは悲しいことです。

しかしながら今回紹介させていただく「菊正宗」は、ほんとうに飲んでみたくなるすごいお酒です。
1659年創業。兵庫県神戸市東灘区にある、なんと350年近い歴史をもつ醸造所です。
現在、アメリカ、イギリス、台湾、シンガポール、香港はじめ、世界各国に輸出していますが、なんと1877年にはすでにイギリスへ輸出をしていました。
日本の業務用・法人向け販売量過去8年間一位。いち早く三増酒を撤廃(戦後の粗悪酒)し、1947年には戦後間もないのに昭和天皇が酒蔵を訪れています。重要有形民族文化財の数たるはなんと566点にも上っています。文化事業にも力をいれ地域社会への貢献を第一にしていて、酒蔵を見学することはもちろん、酒造りまで体験できます。日本広し、といえどもここまで出来るのはここ菊正宗しかないのではないでしょうか。

「菊正宗」
港信之

港信之(みなとのぶゆき)Nobuyuki Minato

ソムリエ、銀座Wine・Bar・Italian「SPACE」取締役支配人。

元ホテル西洋銀座シェフ・ソムリエ。
2004年12月ホテル西洋銀座で開催された、ジョエル・ロブションとロバート・パーカー両氏による「ヘドニスト・ディナー」(いわゆる「100万円ディナー」)のシェフ・ソムリエを務めるなど、数々のイベントで活躍した伝説的なソムリエ。現在は、銀座にある、イタリアンキュイジーヌとワインを楽しめるお店「SPACE」の支配人を務める。
バーテンダーとしても内外の大会で入賞するなど、ワインに限らず、シングルモルトや日本酒、焼酎など、こだわりのあるお酒に関する知識は超一流。作り手との交流も欠かさない。

小僧comアドバイザリーボードメンバー
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