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グルメ 今月の一本

「カロンセギュール」と「サンタムール」 文=港信之 日本でも有数のソムリエとして、また一流バーテンダーとして、お酒に対するこだわりを持ち続ける港信之さんが、ワイン、日本酒、シングルモルト、焼酎など毎月ひとつのブランドや銘柄を選び、一流のブランドや人気の銘柄を支える作り手たちのこだわりを伝えます。

12月、「師走」に入りますと、皆様もかなり外食をされる機会が増えるのではないでしょうか。年間を通して、一番外食産業が盛り上がる季節です。
和食に熱燗だったり、焼酎のお湯割と鍋料理であったり、おいしい和食と日本で生まれたおいしいお酒類による「マリアージュ」。フランス語で食事とお酒が相乗効果によってよりおいしく感じられることを表現する時に良く使われます。日本人でよかったと思える和の食事と日本のお酒の相性は数知れず、この季節に感謝します。

一方でこの季節、どうしても華やかな「フランス料理」「イタリア料理」がクリスマスシーズンを盛り上げていますね。そうなるとやはり「ワイン」。今回はこの季節に使えるワインを二本ご紹介いたします。

先ずは、フランスのボルドー地方、サンテステフ地区で作られています「シャトー・カロンセギュール」というワインです。
このワインには、正面のラベル(エチケットと我々は呼んでいますが)にハートの絵が描かれていまして、ワインのお好きな方なら一度は見たことがあるかもしれない有名なものです。
ハートのマークが書かれているそのストーリーも優れていて、我々の中では有名な話となっています。 18世紀に、格付け1級のシャトーラフィットなど、数多くのシャトーを所有していた「セギュール公爵」という人物がいました。セギュール公爵はカロンセギュールを口にした瞬間ひらめき、畑を見に行くと、そのシャトー(お城やそこの領地になっている畑)に惚れてしまい、すぐさま自分のものにしたかったとのこと。彼はどのシャトーも素晴らしく大切だが、一番大事に想っているのはカロンセギュールであると言い、「我が心はカロンセギュールにあり」という有名な言葉を残しました。この心を終世残すため、ワインのラベルにハートマークを描き「セギュール公爵の心があるシャトー」として、今尚ハートマークを誇りにして広まっています。素敵なシャトーの物語でしょう。
当然ながら、中味も信頼されていて、毎年すばらしい評価のワインを造っています。ソムリエ風に講釈いたしますと、
“2003のヴィンテージは、かなり素晴らしいものができあがった。熱波はあったものの、その暑さによってカベルネ・ソーヴィニョンの完熟度が高まり、色合いも深く濃く、酸は柔らかく、良い年のワインにみられる過度のタンニン分を感じなくとろみをも見せ、黒い果実や、ブラックベリー、甘草、若干の煙草の葉、森の下生え、しだや青い香りの特徴がある。非常に長い余韻でまだまだ長い未来が楽しみです。”
少しはソムリエらしいコメントですか?
もし買われて飲まれるのであれば、買って来てすぐには飲まずに少しばかり静かに置いといてください。買ってきたばかりのワインはちょっと疲れてしまっていますので休ませてくださいね。飲むときの温度は出来るだけ20度くらいを目安にしていただければ(買ってきた年号にもよりますが18度くらいより22度くらいで飲まれれば味わいや香りなどがはっきりわかります)。

もう一本、フランスのブルゴーニュ地方、ボジョレー地区の「サンタムール」村のワインです。
この村は、先月から今月にかけてまだ店先で売られています「ボジョレーヌーボー」で有名な地方にあります。日本語で説明すると顔を赤らめるほどの素敵な名前の村なのです。その意味とは、Saint=聖なる、と、Amour=愛というフランス語からなっています。
フランスの第2の都市であり、美味しいレストランがひしめき合っているリヨンと言う都市から車でおよそ北へ30分。教会には愛の守護聖人アムールが祭られているので、ここで結婚した二人は幸せが約束される上、5世代目には生まれ変わった二人が再び巡りあって結婚するというロマンチックな伝説が残されています。
こんな素敵なワインを、どうやって表現してみるものか?
香りが印象的で、この地方のワインは最初に若々しいスミレの花、木になっている状態のクランベリー、飲んでみると果実味が芳醇で口の中一杯に果実ミックスのアイスをほおばっているみたいです 。軽めの癖の無い飲みやすいワインです。
ボジョレーヌーボーもいいのですが、少しランクアップして「ヌーボーと一緒の葡萄品種と同じ地区で、もっと美味しく、素敵なワインは如何ですか」と誘ってみてはどうでしょう。
こちらのワインは、2005年のものであれば16度くらいより18度くらいまでの温度が個人的には好きです(常温で保存されていたのであれば、飲む30分くらい前に冷蔵庫に入れればこのくらいの温度になります)。

両方のワインからお分かりいただけるでしょうが、相手に対して心が伝わる、もしくはうんちくを傾けられるワインではないでしょうか。
意中の異性の方と12月にワインをあける機会がありましたら是非上記のワインを気にかけていただき、相手に対して意思を伝えるべく奮闘してみては如何でしょうか。もちろんこれから2月にかけての「バレンタインデー」にも使えると思いますが。

相手にハートを贈って、心からの愛を分かってもらうことは難しくは無いのです。
忙しい12月でしょうが、お酒によって素晴らしい食事会や素敵な時間を過ごしていけますようお祈りいたします。2007年が素敵な時間となりますことも合わせてお祈り申し上げます。


港信之

港信之(みなとのぶゆき)Nobuyuki Minato

ソムリエ、銀座Wine・Bar・Italian「SPACE」取締役支配人。

元ホテル西洋銀座シェフ・ソムリエ。
2004年12月ホテル西洋銀座で開催された、ジョエル・ロブションとロバート・パーカー両氏による「ヘドニスト・ディナー」(いわゆる「100万円ディナー」)のシェフ・ソムリエを務めるなど、数々のイベントで活躍した伝説的なソムリエ。現在は、銀座にある、イタリアンキュイジーヌとワインを楽しめるお店「SPACE」の支配人を務める。
バーテンダーとしても内外の大会で入賞するなど、ワインに限らず、シングルモルトや日本酒、焼酎など、こだわりのあるお酒に関する知識は超一流。作り手との交流も欠かさない。

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