小僧の庭
■住宅メーカー担当者の思い
バブルの狂乱とその後の低迷を経験した住宅メーカーの30代〜40代の中堅社員の中から出てきた、「本当に誇りを持って販売できる住宅を作りたい」、そんな人間としてあたりまえのことを、住宅メーカーとしてもあたりまえに実現したいという思いが形になったのが、このプロジェクトです。チームが結集し、上層部を説得し、実現にこぎつけたその熱意は、買い手にまで伝わっていったと思われます。
■住宅地作りのコンセプト
港北ニュータウンに10棟の建売住宅を建てるというこのプロジェクト。この住宅地作りのコンセプトは「自立型共生」を目指すというものです。自立型共生とは、各戸の所有形態や自立性はそのままに、隣同士、地域全体で住環境を共有することで、暮らしの豊かさはもちろん、街の美しさを保ち、住宅そのものの資産価値も上げていこうというものです。そのために、
1. 自然の涼しさや暖かさを共有する。
2. 庭の景色を共有する。
3. 地域の景観を共有する。
という発想です。
■庭を共有するということ
従来であれば、住居ごとに塀で囲まれてしまい、そこで視野が行き止まりになってしまう庭を、低いフェンスで境界を分けるものの、隣接する6棟くらいが自宅の庭として体感できるような、一つの大きな庭として造りました。自宅の庭から、隣家の庭へ、視野は遮られずに、さらに街全体の景観へと繋がっていくことになります。まさに「借景」の考え方です。
それにより、個人の庭という、限られた面積ではなかなか難しい、木立(雑木林)を作り出すことができます。緑を愛でるだけでなく、夏の暑さをしのぎ、冬には日差しを享受する、自然の空調装置の役割も生まれます。
■感動も共有
新築住宅の建設現場では、まず建築工事業者が家を建てはじめ、その途中から造園の工事業者が現場に入ります。建築工事業者たちは、工期と予算に縛られ、どうしても現場ではカリカリしがちです。ところが、今回植木職人により木が植えられていくと、時としてぶつかり合うこともある建築工事業者たちの中に、ゆったりとした空気が流れ始めました。ペンキ屋さんからは思わず「良いねえ〜!」という言葉も出ました。
その感覚は、近所の人たちにも伝わり、感嘆の声や購入への関心を示す人まで現れ、「犬がどうしても来たがって」と毎日犬の散歩で訪れる人もいました。
私自身、ほぼ庭が完成し、住宅の中から庭を眺めた時、意図した以上の感動を覚えましたが、実は、このプロジェクトに関った全員がこの感動を共有していたことが分かりました。それぞれがこのプロジェクトに「誇り」を持ったということでした。
その思いは、購入してくださった方にも確実に伝わったと思います。最初の購入者は子供たちのためにと2軒購入されましたが、この物件の資産価値をきちんと認識したからこそ、2軒を同時に購入することにしたのでしょう。
■庭の特徴
このエリアはもともと「谷戸」と呼ばれる地形です。「谷戸」とは、丘陵地の谷間で小川の源流域を指す環境のことで、その周りの林や沼地なども指します。港北ニュータウンは、こういう地域の特徴、いわゆる里山の自然を残して開発されてきました。
そこで、このプロジェクトでもこの地域在来の樹木、「やまぼうし」「やまざくら」「えごの木」「やまもみじ」「しでの木」「こなら」などを植え、自然環境との調和を図ることにしました。
また石についても、地域から出てきた石を使ったロックガーデンを造ることにしました。石を積み上げることで、そこには微気候が生じます。つまり、石を置くことで日向と日陰、暖かい処と寒い所ができ、土壌中の水分を調節し、空気の流れ、植生の違いを作り出せます。それにより、山野草から園芸種まで植えられる木や花の種類も増えました。
一言で言えば、地域に根ざした樹木と石を活用したナチュラルガーデンのロックガーデン仕様です。
こうした庭がつながることで、風がつながり、景色がつながり、地域がつながり、街全体が美しく安全になっていく。それぞれの住居の資産価値もあがり、子孫へと引き継がれていきます。そんな豊かな街づくりに参加できたのは、本当に素晴らしいことでした。
(左)繋がる庭
(中)室内から見た庭
(右)街並み
関連情報
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