盛夏がやってきます!この季節、体力の消耗を感じると、自ずと意識は高原の清涼感を求めつつも、結局は都心近郊のギラギラした太陽の下でBBQに舌鼓を打つということが多いようで…。
ここ最近、この手の仲間内のパーティー、なんの素材をどこから調達したのか? というごくごくありがちな話題から、どんな風に食べ物を装えばスマートでラグジュアリーなしつらえになるのか?? という内容に変化しつつあります。
ビールを缶からいただくのも悪くはありませんが、それじゃあそこいらのガキのBBQと一緒。「ヘン!こちとら発泡酒じゃあない!」と威張って、どんなに食材やグリルツールにこだわったところで、白い紙皿+割り箸にはかなり痛い目に遭っておりまして…いざいただこうとした、まさにそのとき…バランスを崩したように皿はヘニョ、箸は1本に…
「ああ”100g2,000円のお肉が落っこちた…」
そこでInternational Plastic Industrie(IPI)がフランスを代表するデザイナー、フィリップ・スタルクに依頼して生まれた「LUX」の登場となります。
一見上質のメタル系素材のように見えるインジェクション※1のカトラリーやプレート、薄くクリアな色目のグラスやボールは思わずガラスですか?と見間違えてしまいそう。
フランス、パリ生まれのスタルクは、建築・インテリア・家具・食器・出版物・インダストリー等さまざまなデザインを手がける建築家と言うより総合的なデザイナーとして有名。

こんな風にパック入りで、お値段もとてもリーズナブル。
LUX:お皿(6ヶセット)¥2,100 グラス(10ヶセット)¥945〜¥1,050 スプーン(10ヶセット)¥525〜¥630など
お問合せ:シボネ青山 03-3475-8017
※1 インジェクションモールディングのこと=射出成形
不定形(粒状)の材料から、工程で複雑かつ精巧な部品を短時間で完成する、非常に生産性が高い合理的な工法。プラスチックなどの加工法である。熱可塑性樹脂の場合が典型的で、金型に軟化する温度に加熱したプラスチックを射出圧(10〜3000kgf/c)を加えて押込んで型に充填して成形する。

冷た〜いシャンパンをグラスに注いで頂き、プレートにセット! 皿の上の食べ物をいただく時はグラスは突起部分に差し込む。ドリンクをいただく時はカトラリーを皿の上に置ける。この当たり前のことが、さりげなくできてこそ優秀なプロダクツといえるんですよね。仕掛けは至ってシンプル。
底の部分がミソ!
さらの突起部分に差し込むだけです。
勿論どちらもスタッキング可能。
さて、この優秀なプロダクツをデザインしたスタルク氏の造形力はもちろんのこと、成形技術も実にすばらしい!のであります。インジェクション特有のウェルダーも見えないし、ペラペラ感もない。プレートにグラスを入れた案配もいい感じです。優れたデザインには必ず優れた製法と技術が伴います。

ジューシーサリフ ¥10,500(税込)
お問合せ:アレッシィショップ青山
03-5770-3500
さて、フィリップ・スタルクというデザイナーが日本に登場したのは80年代の終わり頃。神宮前の「マニン」を手がけ、浅草「アサヒビールスーパードライホール・フラムドール」の迷(?)作など、建築畑のお人かと思いきや、90年にはアレッシィからニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションにも認定されている傑作を発表!
当時は、SF系の爬虫類オブジェにしか見えなかったけれど、16年の歳月が過ぎてもこれより斬新な形を持ったレモン絞り器にはお目にかかっていない気がします。
そして個人的にスタルクはすごい!と思い始めたのは、遅ればせながら94年、「ドリアデ」から「ロードヨー」というチェアを発表後のこと。インジェクションの最新技術を用いて安価でなおかつエレガントな形を生み出し、更にカバリング※2というオーソドックスな付加価値を加えたまさしくマスターピース。量産品なのに独創的でコンセプチュアルなデザインは当時大変珍しかったといえましょう。
本来プロダクトデザインなるものは手の届く価格帯であることが求められるはず。
スタルク氏はこれに「エレガント」と「ウィット」いうエッセンスを持ち込んだ初めてのデザイナーだと思うわけです。
※2 カバリング
ソファなどにファブリックでカバーを掛けること

ドリアデLORD YO
¥29,400(税込)
お問合せ:ダ・ドリアデ青山 03-5770-1511

左:ラ・マリー ¥25,830(税込) 右:ルイ・ゴースト ¥33,075(税込)
お問合せ:カルテルショップ青山
03-5468-2328
その後98年には「カルテル」からポリカーボネートでできたスタッキング可能なスケルトンタイプ「ラ・マリー」
2002年には「ルイ・ゴースト」
2004年にはイタリアで古くから多くの家庭で使われている伝統的なフォルムの椅子をリメイクした「OBJET PERDU」へと素材を変えて受け継がれてゆくのでありました。フィリップ・スタルクというデザイナーはこういった編集作業に優れていると言えるのではないでしょうか。
ドリアデ OBJET PERDU
¥50,400(税込)
お問合せ:ダ・ドリアデ青山
03-5770-1511
で「LUX」ですが、これはもうアウトドアだろうと、インドアパーティーだろうと、食器を使い捨てることに対して、「エレガント」と「ウィット」を兼ね備えたデザインを得意とするスタルクが掲げたアンチテーゼなんだろうと。
色を変えたり、組み合わせを工夫したり、そうすることで立派なディナーウェアになる「顔」を兼ね備えている、そう言い換えることもできると思います。
まさしくデザインという仕事の醍醐味。
これでシャンパンのお味もグ〜ンと引き立つこと間違いなしですね。
このように、デザインする行為は、生活用品にとっても重要な要素だしだからこそおもしろいんです!
スタイリスト。
照明器具デザイナー、生活雑貨関連会社での商品企画・輸入商品のバイイング担当などを経てインテリアスタイリストに。多数の雑誌やCMのスタイリングを手がける。近年は企画展示会場構成・展示スタイリング、新築マンションのインテリアコーディネイトなどにも従事し幅広く活躍中。