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ライフスタイル 今月の小僧 第7回 菅原 章さん

Drive up my life!

超ハード!ビジネスマンである菅原さんだが、多忙を極める日常の中でも、愛すべきクルマとハードロックは欠かすことがない。彼が籍を置く会社は、世界最大にして、最強の経営コンサルティング会社、マッキンゼー&カンパニー。今回は菅原さんの“マジ”な仕事の顔と、大好きなモノは子どもの頃からちっとも変わらないというやんちゃ坊主の側面をお届けしたい。実に興味深い2つの世界をいっぺんに紹介しなければならないのが辛いところである。

マッキンゼー&カンパニーは、世界中に80以上の支社をもち、約7000人のコンサルタントを擁する戦略コンサルティング会社だ。クライアントは世界中のあらゆる産業のトップ企業から政府機関までさまざま。知名度から信頼度まで、すべてにわたってナンバーワンであり、国際ビジネス界の一流ブランドとして知られている。

その中で菅原さんは「プリンシパル」、という肩書きを持つ。顧客企業の経営者の“パートナー”として緊密な関係を築き、また専門分野においても一流のエキスパートであることが求められる重要なポスト。彼はマーケティングという切り口で、日本の研究グループのリーダーを務めつつ、製薬インダストリーを専門領域とする。さらに社内的にも、マッキンゼーのリーダーシップグループの一員であり、オフィスをリードする立場でもある。

ひと言で表現するなら、
極めて多面的に人間の能力を上げていく場所。

コンサルティングという仕事は、経営課題や戦略、組織変革など、企業が抱えている問題点に対して検証し、解決に導いて行くもの。そのベースとなるのはさまざまな調査や分析だ。データを集め、ファクトを蓄積し、それを組み上げて提案するという多面的な能力が必要とされるという。
「論理的思考は最低限。あとはどんな困難なことがあってもやり遂げる強いパーソナリティー、そしてリーダーシップ。また、我々は“Drive”という表現をしますが、高揚感というか一種狂信的なもの。一気にうわーっと物事を推し進めることができる強力なパワーが必要ですね」
例えば、ある巨大企業が20年掛かって解決できなかった事柄があるとする。それをどう解決するか一一。マッキンゼーにはそんな課題も持ち込まれる。
「答えがどこにあるのか、何が正解なのか、そもそも答えが出るか出ないのかすら分からないことがある。もちろん、エキスパートを集め最良のチームが結成されるわけですから、必ず完璧に解決策は導き出します。でも日々魔物のような不安が押し寄せてくる感じですね(笑)。その不安を打ち消すためにがむしゃらに仕事をしているようなもの。この何とも言えない恐怖感は、“Drive”がないとちょっと耐えられない」
プロセスよりも結果が求められる厳しい世界。面白いだけでは務まらない大変な仕事だ。求められるのはプロフェッショナリズム。例えば、10日間ほどんど徹夜でレポートをまとめ上げても、クオリティが低ければ10日間遊んでいたのと同じ。逆に言うと10日間寝ていてもいいから、一流のアウトプットを示してくれと一一。自己研鑽を怠るとついて行けなくなる社会でもある、と菅原さんは言う。

仕事も遊びも、パワーと信念で。

そんなハードな日常に身を置く彼が、このところ幾許かの時間を過ごすのが、NSXのコックピットである。
ホンダNSXとは唯一、世界で認められた国産スーパースポーツカーだ。スーパースポーツという呼び方がピンと来ないなら、運転を楽しむための最高級車であると考えればいい。だから高価である。1千万の価格帯にあるクルマだ。
「小学校の頃からF1を夢中になって観ているうちにホンダを知ることになった。いろいろと聞き齧るうちに自動車というものに対する本田宗一郎さんのスピリットというか、魂に感動しましたね。F1そのものもすごいけど、ここにも何かすごいものがあるなと。免許を取ったら絶対ホンダだと思いました(笑)」
子供の頃からカーレースに憧れてきた菅原さんは現在4台のレーシングカーを所有する。なかでもNSXはスタイルの良さやコレクションとしての価値だけでなく、クルマそのもののポリシー、こだわりが好きなのだと話す。
「最近のクルマはマーケティングが先行してつくられているものが大半です。つまり、市場が欲しがっているクルマをつくり、売る。けれどNSXはホンダの理想とするマシンを開発し、丁寧に仕上げ、プライドを持ってユーザーに届けていました。この数十年間、ホンダは日本のモノづくりの精神や技術を世界に十分アピールしたと思う。まさにホンダのコーポレートブランドを体現していると思いますよ」
NSXはいわば実用性と楽しみを両立したクルマ。ランボルギーニやフェラーリのように、乗るときにどこか気負ってしまうものでなく、サンダルひとつで運転してコンビニにも行ける。そしてそのままサーキットに行ってガンガン走れる。そんな無骨なところも気に入っているという。

仕事の合間に趣味を楽しむ、というより
このために仕事をしているようなもの(笑)
だって、コンサルタントよりずっと前からやってきたことだからね。

時間があれば筑波など、関東近郊のサーキットへも出向く。NSXにはタイム計測器もセット済み。
「ゴルフなどのようにあらかじめ予約をすれば、コースで走ることができるんです。初めは走るだけで満足していたのに、慣れくるとタイムが気になる。これを分析するわけです。1周目の第1区間と3周目の第3区間をピックアップするとベストタイムだとか…。あそこのコーナーは次回はこのイメージで行こうとか、ごちゃごちゃ一人で真剣に考えています(笑)」
一流企業のビジネスマンという立場の傍ら、スポーツカーをこよなく愛し、クルマの話をする時の瞳は、本当に子どものように輝く。
「そうそう、ガキっぽく見えるところがあるみたいですが、モノの好みが子どもの頃からほとんど変わっていない。クルマは小学校の頃から好きだった。音楽も昔から好きだったハードロックそのまま。ライフスタイルも変わっていませんね」

6歳まで父親の仕事の関係でエジプトのカイロで暮らした。日本に比べて治安が悪い、水は汚い、物心ついた時からなかなかハードな日常が取り巻いていた。
「けっこうタフなところでね、人生は厳しいものだと子どもの頃にしっかり植えつけられました。だから日本に戻っても、こんなはずはない、日本もいつかああいう風になるんだと思ったり(笑)。なんといっても頭の中はエジプトですから」
そう考えた菅原少年がはじめたのは超スパルタ塾通い。小、中、高校とがっちり塾通いをし、のんびりする間もない日々を送っていたそうだ。しかも、決して親に勧められた訳ではない。
「だから、そういうバタバタ忙しいところもいまだに変わっていないでしょう。仕事と遊びととにかく動いていますからね」
さて、この他にも菅原さんは、学生時代はプロを目指したこともある音楽の世界、幅広い他の業界、世界の仲間たちとのプライベートなイベント、などなど交友関係も広ければ活動範囲も広い。時間の使い方の上手さとバイタリティの賜物とはいえ、恐れ入る。
「発想が逆なんですよ。クルマ好きと音楽は子どもの頃からずっと続いていること。コンサルティングよりずっと古い(笑)。確かに1日のほとんどは仕事のことを考えていますが、ライフスタイルの中心はやっぱり好きなモノなんです」
菅原さんは現在39歳、最後に“歳を重ねる”ということについてうかがった。
 「またクルマの話ですが、ヨーロッパに昔のF1マシンを修理して乗るレースがあるんです。F1レースが終わった後のサーキットを使って、自分たちで往年の名車を走らせる。そういうのを何億円も掛けてやっている。それこそ小僧世代の人たちがね。観客がいて、チャンピオンもちゃんと決める本格的なレースです。彼らが言うには“F1はミュージアムに飾っておくものではなく、走らせ、オーディエンスに感動をもたらすものであるべき。それは今余裕のある俺たちがやるべきことだろう”と。もう、拍手ですよ(笑)。そういう粋というか、ここまでクルマが好きなら、自分もいつかそういった神髄みたいなところに到達できたらいいなと思いますね」



サーキット/オフィスにて



インタビュアー:下川原和代 / 写真:宇井眞紀子・小僧com編集部

菅原章 さん

菅原章 (すがはら あきら)

経営コンサルタント。
マッキンゼー・アンド・カンパニー、東京オフィスのパートナー(プリンシパル)。同社グローバル・マーケティング研究グループ、およびアジア・ヘルスケア研究グループのリーダーとして、多くの内外有力企業における、経営戦略、組織設計などのコンサルティングに携わる。著書、訳書、講演多数。モータースポーツとハードロックを愛してやまない。また、糸井重里氏主宰の「ほぼ日刊イトイ新聞」にて、「恋はハートで仕事はマジで」連載中。

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