今月の小僧《特別編》 2年間の総集編
第1回に登場していただいた黒沢元治さん以来、23回計24名の小僧たちの取材に立ち合わせていただきました。
毎回毎回、それぞれの方々のお話に驚いたり、感心したり、納得したりの連続でした。
これまでの24名を振り返ると、いくつかのグループに分類できるかなと思っています。これからそのグループ毎にご紹介していきます。
私の勝手な判断ではありますが、少しでも皆さんに興味を持っていただき、読み返していただければと思います。
一つのことに打ち込んで、それに喜びを見出し、創意工夫をもって常に一歩でも先へと前進を目指す方々がいます。
「今月の小僧」の中では、第1回の黒沢さん、第11回山宮正さん、第13回土屋國男さん、成範さん親子、第14回安孫子由実さん、第16回奥田明久さん、第17回緑川美由紀さん、そして第20回中川一辺陶さんなどです。

黒沢元治(くろさわもとはる)さん
黒沢さんは、第1回日本グランプリ優勝という輝かしい経歴を持ち、今でもカーレースのチームを率いつつ、 クルマやタイヤの仕組みを知り尽くした上で、技術的、論理的に正しい運転テクニックや、安全で快適なクルマの開発などに力を注いでいます。
山宮正(さんぐう ただし)さん
山宮さんは、長年ヨーロッパで自転車のロードレーサーとして活躍してきました。その経験を生かして、 今でも日本選手が欧米で活躍するために、技術的なアドバイスはもちろん、厳しいレース生活に必要なノウハウなど伝授しています。
土屋國男(つちや くにお)、成範(まさのり)さん
土屋さん親子は、父親の國男さんや國男さんと同じハナタレ小僧世代が磨いた技術を、ヨチヨチ世代で息子の成範さんが、現代にあった新たなビジネスモデルを構築する中で、さらに若い20代のハイハイ世代に伝えていこうとしています。 日本の職人さんの新しいモデルがそこに垣間見られる気がします。
安孫子由実(あびこ ゆみ)さん
安孫子さんは、居酒屋チェーン「鮒忠」の三代目。子供の頃から家業を継ぐことは既定の事実。しかし女性で、しかも若くして経営の一線に立つことになった彼女。圧倒的に年上と男性の多い職場で、今も従業員を気遣いつつ、「怒るな」「威張るな」「欲張るな」の精神でお客様の満足を第一に創意工夫の日々を送っています。
奥田明久(おくだ あきひさ)さん
奥田さんは、「アサヒカメラ」の編集長。朝日新聞に入社後、事件記者を長年担当し、その後は週刊誌や外報部の記者として世界を飛び回り、常に一線の記者として国内外の大事件の取材を手がけてきました。一方で小さな記事の取材対象にも温かい目を注ぎつつ、古いしきたりや仲間内の慣習にとらわれない、規格外のジャーナリストでもあります。
緑川美由紀(みどりかわ みゆき)さん
緑川さんは、ダンス一筋。ダンスを基に開発したフィットネスや、ダンサーやアスリートが体を手入れするための操体法を基に開発したボディケアを、今も実践すると同時に、後進の育成に力を注いでいます。 30年経った今も、学生時代とほぼ変わらぬそのスタイルは驚異です。
中川一辺陶(なかがわ いっぺんとう)さん
中川さんは、日本の土鍋に革命をもたらした人です。信楽焼きの窯元に生まれ、反発しながらもその仕事を受け継ぎ、そしてある料亭からの依頼で製作した業火に耐える土鍋をきっかけに土鍋作りを専門としました。 今日本を代表する一流料亭や高級ホテルの和食レストランでは、中川さんの土鍋が使われています。
それまで長年務めてきた企業や仕事から、次なる目標に向かって転身した方々もいます。その潔さや鮮やかさ、そして掲げる次なる目標そのものの志の高さに感銘を受けます。
第3回の植山周一郎さん、第8回浜潤一さん、第10回佐藤敦子さん、第15回高橋美江さん、第19回林恵子さん、第22回坂井諒三さん、第24回松信章子さんなどです。

植山周一郎(うえやましゅういちろう)さん
植山さんは、30代半ば、ソニーの課長という職を辞して独立。経営コンサルタントとしての道を歩み始めます。 最初は仕事がなく、毎日が日曜日のような生活だったとか。しかし強力なコミュニケーション能力を発揮して、その後サッチャー元英国首相やヴァージングループのリチャード・ブランソン会長の顧問を務めるなど、今でも国際的な活躍を続けています。
浜潤一(はま じゅんいち)さん
浜さんは、30年間警視庁の刑事として活躍。警視総監賞も数知れずという優秀なデカでした。一方で、高校生の頃からファッションにはこだわりがあり、刑事時代も支給のスーツは一回も着たことがないとか。そんな浜さんが警視庁を早期退職後に選んだのは、パーソナルスタイリスト。 今は企業エクゼクティブや百貨店の上客を顧客として華やかに活躍中です。
佐藤敦子(さとう あつこ)さん
佐藤さんは、ゴールドマンサックスに17年間勤務し、日本人女子社員初のマネージングディレクターに就任。「何かやりたいことができたら会社を辞めよう」と思っていましたが、あまりの忙しさに「やりたいことを見つけるためには会社を辞めなければ」と決心して退職。金融コンサルタントをする一方、エステティック会社を起業し、早稲田大学の大学院で学び、バレエやピアノやお料理のレッスンに通うなど、会社時代より忙しい毎日を送っています。
高橋美江(たかはし みえ)さん
高橋さんは、現在絵地図師でプロの散歩屋。美大を出て就職しましたが結婚を期に退職。 主婦業と子育てに専念していました。しかし、「緊張感」と「達成感」が足りないと少しずつ自宅でデザインの仕事を始め「兼業主婦」となります。子供たちが独立した今は、絵地図の制作を中心に、絵地図を作成するために始めた散歩も仕事にして、日々精力的に活躍しています。
林恵子(はやし けいこ)さん
林さんは、「40歳で社長になる」という目標を掲げ、日本ランズエンドの社長就任という形でその夢を達成しました。そしてその後の目標を「45歳で独立」と定め、ランズエンドの社長を辞して、自身の事業立ち上げに邁進。2年遅れになりましたが、昨年小僧世代の女性をターゲットとした通販事業「DoCLASSE」をスタート。 着実に夢をかなえる転身を実現させています。
坂井諒三(さかい りょうぞう)さん
坂井さんは、ソニー一筋の社会人人生の内、32年間をアメリカで過ごし、そのまま海外で定年退職を迎えた最初の人物となるという異色のキャリアの持ち主。坂井さんの新たな目標は、ハワイと日本の文化的、経済的な交流を促進するため、アメリカの政治の世界で活動していくこと。 その第一歩としてハワイシニアライフ協会を設立、会長として積極的に活動しています。
松信章子(まつのぶ あきこ)さん
松信さんは、長年「自立」を目標にアメックスやフェデックスという外資系企業で活躍してきました。その目標が達成できたと納得がいったとき、次に掲げた目標は「誰かのために働く」ことでした。 NGOでの国際支援や、女性のためのキャリア支援などを経て、今は世界的なリーダーを育成するための奨学金プログラムの運営に携わっています。
最後のグループは、一つの仕事だけに収まらず、趣味が嵩じてプロ顔負けの活躍をしたり、実際プロとして活躍したり、将来を見据えて二つの仕事に情熱を燃やす方々です。
「今月の小僧」たちの中では、第2回の一泉ナオ子さん、第4回杉山 "Tac" 隆司さん、第5回なら春子さん、第6回澤泉雅之さん、第7回菅原章さん、第9回小川隆夫さん、第12回山口利仁さん、第18回栗山雅則さん、第21回郡裕美さん、そして第23回川上喜三郎さんなどです。

一泉ナオ子(いちいずみなおこ)さん
一泉さんは、CPAの資格を持ち、外資系出版会社の財務担当重役として企業経営の中枢にかかわる仕事をこなすキャリアウーマン。一方で、プロのジャズボーカリストとして積極的にライブ活動もしています。ビジネススーツに身を包んだ昼間の姿と、華麗なドレス姿でマイクを握る夜の彼女、どちらもちゃんと一泉さんなところが素敵です。
杉山"Tac"隆司さん(すぎやま"タック"たかし) さん
杉山さんは、現役のソニーの担当部長さん。イギリス留学中に出会ったオリエンテーリングではカリスマ的な選手となります。一時中断し、20年ぶりに再開した後は、アドベンチャーレースにも挑戦し、06年ランドローバーG4チャレンジの日本代表として最年長の参加者となります。今も仕事で世界を駆け回ると同時に、空いた時間には野山を走る驚異の小僧です。
なら春子(なら はるこ)さん
ならさんは、NYで活躍するジャズピアニスト。84年にNYに渡って以来、今でも積極的にライブ活動をしています。 その間、コロンビア大学大学院教育博士号を取得し、現在ではコロンビア大学の助教授として後進の指導にもあたっています。 最近はアフリカの太鼓に魅了され、太鼓奏者としても活躍の場を広げようとしています。
澤泉雅之(さわいずみ まさゆき)さん
澤泉さんは、癌研有明病院の形成外科医長。癌の切除手術を受けた人たちの再生医療に情熱を燃やし最前線で活躍する医師です。再生医療はミクロの世界ですが、澤泉さんはもう一つのミクロの世界にも魅了されています。それがフェラーリのミニチュアコレクション。 世界でも有数のコレクションで、将来は顕微鏡の下で自作を組み立てるのが夢とのことです。
菅原章 (すがはら あきら)さん
菅原さんは、マッキンゼー&カンパニーのプリンシパル。世界最大、最強の経営コサンルティング会社のトップの一人として超多忙な日々を過ごしていますが、一方で、子供のことからのクルマ好き、ロック好きは変わらず、空き時間があれば、サーキットにもライブ会場にも飛んでいきます。 「マジ」なビジネスマンの顔とやんちゃな小僧の顔、二つとも本物です。
小川隆夫(おがわ たかお)さん
小川さんは、現役の整形外科医。毎日患者さんの診察にあたっています。 一方で専門誌やライナーノーツの執筆をはじめ、これまでに30冊を超える著作を発表するなど、プロのジャズ・ジャーナリストとしても活躍。 ジャズをもっと身近に、気軽に楽しんでもらいたいと、ジャズの初心者を対象にしたトークイベントも定期的に開催するなど、積極的な活動を続けています。
山口利仁(やまぐち としひと)さん
山口さんは、八王子で整形外科病院を経営する院長先生。手や指の欠損などが専門で神の手を持つと評判の先生です。そんな先生のもう一つの顔は農夫。実家のある山梨に所有する果樹園や畑で農作業に精を出しています。 新たに山を切り開いて豚の飼育も始めるなど、様々な課題を抱える日本の農業を再生し、食料自給率を上げるために、今も失敗を恐れず模索中です。
栗山雅則(くりやま まさのり)さん
栗山さんは、自由が丘生まれの自由が丘育ち。「が丘」の人です。 地元への愛着は一入で、地域の交通手段の確保を目指したてんぷら油バスを走らせるなど、地域での活動も熱心に進めています。評判のスポーツクラブ「リバティヒル」やテニススクールの運営といった本業は6割、地域活動は4割という、2足の草鞋どころか、3つも4つも帽子を持つ地元密着小僧です。
郡裕美(こおり ゆみ)さん
郡さんは、個人の住宅や公共施設を中心に手がける建築家です。一方で、世界的に評価されるインスタレーションのアーティストでもあります。郡さんのテーマは、光と水。建築にもアートにも共通するテーマです。建築では必要とされる制約から、アートの世界では自由になれる。 その結果がまた建築にフィードバックされる。そのバランスがとても心地よいといいます。
川上喜三郎(かわかみ きさぶろう)さん
川上さんも、郡さんと同様建築家です。川上さんの場合は、都市計画がその中心的なお仕事とのことですが、やはり彫刻家というアーティストとしての顔も持っています。川上さんのテーマは、自然により近くということ。自然とは空気と水と光。ここでも郡さんに共通するものがあります。建築という社会性と創造性の両方を必要とする職業ならではでしょうか。 しかし建築家としても彫刻家としても超一流。その究極の小僧ぶりには脱帽です。さて、24名の方々を振り返ってきましたが、皆さんにお話を伺っていて、必ず出てくる言葉は、「自分はラッキーだった」ということと、「人との出会いが今に繋がった」ということでした。皆さんきっとたいへんな努力を重ねてきたはずですが、どなたも「自分はこんなに苦労して今の地位を勝ち取りました」とは言いません。皆さんに共通しているのは、「いや私なんてまだまだです。これからも周りの皆さんに支えられて一歩ずつやっていくことになるでしょう」という姿勢です。 こういうお話が聞けるだろうと思ってお願いした方々ではありませんが、結果として皆さんの口から同じような言葉を聞けたことは、まさにこれこそが「小僧」なのではないかなと感心し、感動しました。 ここにご紹介した24名の方々の内、一人でも二人でも興味を持っていただきましたら、ぜひその方々の記事全文を読み返していただければ幸いです。
「今月の小僧」では、これからもこれはというユニークで興味深いライフスタイルを送る方々の、これまでの人生や未来に向けた思いなどを伺っていきたいと思います。どうぞお楽しみに。






