資産運用も「個」の時代
21 世紀、それは「個」が意識される時代です。グローバル社会が大組織中心の集権型経済から小組織中心の分権型経済へ移行、産業構造も「個」をサポートする形で進化しています。そんな中、資産運用の世界も大きく変化しています。「国や社会」が資産運用を代行してくれる時代から、「個」が自らの責任で資産運用を実践しなければならない時代への移行です。
私事、 1989年から15年弱、個人や企業のお客様の資産を運用する、いわゆる機関投資家として株式運用に携わりました。21世紀に入り、株式市場は、バブル崩壊という暗く長いトンネルを抜け出し始めました。にもかかわらず、私自身は、既存の機関投資家運用の限界を強く感じ始めていました。お客様の大切な資産運用をしているのに、実質的にはお客様の顔が見えない、お客様の真のニーズを感じられない〜という虚しさです。
このような思い、そして株式投資の世界に新しい価値観を創造できないかとの問題意識から、 2004年春、株式会社トリアスを起業いたしました。
トリアスでは、投資家の皆様と株式市場に公開・上場する企業の皆様に、「株式投資を通じ、長期的な ”Win-Win” の関係を築いていただきたい」という企業理念のもと、投資家の皆様と企業の皆様との真のコミュニケーションを通じた【健全な企業価値の顕在化】を目指す活動を行っています。
「短期化」「順張り化」の進行
ここで、株式投資の世界で起きているいくつかの変化について、少し触れておきます。キーワードは、「投資の短期化」と「順張り投資」の増加です。
例えば、プロの投資家である機関投資家の領域で顕在化しているのが、パッシブ化の進展です。パッシブ運用とは、株式運用を株式市場のリターンと連動させる投資手法ですが、昨今、主要市場に上場している全銘柄を自動的に組み入れる運用が多くなっています。
結果、株式市場全体の動きに連動して株価形成がなされる銘柄が増えたとともに、株価変動を多くの投資家が一斉に追いかけるため、株価が一方向に大きく動きやすい市場環境、すなわち順張りの市場環境を醸成しています。
加えて、運用成績の評価システムが短期化、機関投資家運用も短期化せざるを得ない現状です。投資の短期化は、プロの世界のみならず、個人投資家の世界でも加速しています。
ご存知の通り、株式市場におけるインターネット取引の割合は、ここ数年大幅に増えています。その中でも特に増加しているのが信用取引です。信用取引とは、株式や株式購入の資金を証券会社より借り入れて株の売買を行う株取引のことですが、手持ち資金以上の株式購入や、保有していない株式の売却が可能になります。
手軽にタイムリーに売買ができるインターネット取引の浸透と、手持ち資金を数倍に膨らませて運用できる信用取引の増加により、個人投資家の投資も短期化・順張り化が進んでいます。
「中長期的視点」と「忍耐力」の必要性
低成長、そして不確実な時代である現在、わからないから「短期・順張り」、信じられるのは「目に見える現在の株価だけ」という解も勿論あると思います。けれども、「個」の時代の株式投資に対する解はそれだけでしょうか。
小組織中心の分権型経済、「個」をサポートする新しい仕組みは大きなうねりを創造し、新しい産業や元気印企業を生み出しています。株式投資を通じ、日本の活性化につながるこの貴重なうねりを支援できるとしたら、それはとても夢のある資産運用ではないでしょうか。
但し、その際、投資家として必要不可欠な姿勢が、中長期的視点と時間に対する忍耐力を持つことです。木を育て、豊かな森にする過程には、長い時間が必要です。そして様々な苦労があります。
企業の成長過程においても、同じく多くの紆余曲折があります。中長期の明確な視点と忍耐力があれば、市場が短期的に NG を出している局面での投資、すなわち逆張り投資を行うことができます。中長期的には、逆張り投資によるリターンが極めて高いことは、運用担当者の時代に私自身が何度も経験しています(確かに、とても勇気の要る投資行動ではありますが)。
不確実な時代の資産運用であるからこそ、「長期投資」、「逆張り投資」の発想を大切にしたい。そして、日本の活性化を担う元気印企業の応援団でありたいと思います。
株式会社トリアス代表取締役 上智大学外国語学部卒業。
ソニー株式会社において、海外の製品安全規格、輻射規格等の調査を担当。