I(アイ)を育む
今回は、資産運用における資産分散についてのお話をしたいと思います。15年以上も前、私が富裕層の個人投資家のお客さま向け運用サービスに従事し始めた頃、運用開始に先立ち、まずお客様と十分な打ち合わせをさせていただいておりました。その際、相互に確認した点が、お客様のリスク許容度、そしてそれに基づく資産分散の方向性でした。投資におけるリスクとは、期待している収益に対するブレ、不確実性を意味します。「リスク・リターン・プロファイル」という言葉が使われますが、これは期待する収益と、それを達成するのに想定しうるリスクがどの程度であるかを定量的に表すものです。このリスク・リターン・プロファイルをお客様と運用担当者間で共有することを最初のプロセスとしていました。そして、その上でどのような運用期間でその期待収益を達成するかについても、事前にしっかり話し合いを行いました。
さて、このようなお客様との事前プロセスの中で、中庸のリスク・リターンを達成する運用方針としてご紹介していましたのが、「黄金の3分割」に基づくバランス投資の考え方でした。最近のヒット作にダ・ヴィンチ・コードがあります。このストーリの中にも見られたのが、黄金分割法 (Golden-ratio)を活用したいろいろなマークや建造物でした。美しさの比率、黄金比と呼ばれる1:1.618という比率は、そのバランスの美しさで何世紀にもわたり人々の美的感覚を魅了してきました。この考え方は、運用の世界にも適用され、資産分散における黄金の3分割と言われています。運用資産の種類があまり多くなかった当時は、特に個人の投資家の皆様に対しては、投資リスクの低い資産から、現金/債券/株式を各々3分割することが最もバランスのよい資産分散の形として、この分散を中心に、お客様のリスク・リターンのご希望に応じ、各資産の分散比率を決定していきました。その上で、各資産に組み入れる金融商品の詳細を決めて行きました。
例えば現金資産の場合は、換金性の高さ、不確実性の低さから、リターンは低い一方、リスクの低い運用資産です。とはいえ、昨今は、現金同等と言われるMMF(Money Mutual Fund)において、エンロン・スキャンダルの余波で、同社の社債を組み入れていたMMF商品が軒並み元本割れを起こしたことは、記憶に新しい事件です。
現金は全くリスクがないと考えがちですが、決してそうではない時代になっている事は、常に頭に入れておく必要があるようです。債券の場合は、償還までの期間が短いほど、不確実性のリスクが低くなります。また、発行体によって、信用リスクが異なります。主要国の国債はよりリスクが低いですし、格付けの高い企業の発行する債券についても、リスクがより低いとみなされています。これらの債券は、発行額も大きく、流動性リスクも低くなります。金融資産の中で価格変動リスクの高い株式の場合も同様、流動性や信用のリスクのほか、市場リスクなどを有します。東証1部上場企業のように、企業としての歴史が長く、また市場流動性が比較的高い企業の場合、リスクは相対的に低いと考えられます。
一方、歴史が低く、成長の早期段階で資金ニーズが高いものの、信用力の低い新興企業の場合、流動性の不足を含め、投資リスクは高くなります。このため、主要市場と言われる東証1部市場等に比べ、ジャスダックやヘラクレスと言った新興市場の方が、市場リスクが高いことになります。
黄金の3分割を応用した資産分散の領域は、金融商品の多様化により、日々進化しており、現在では不動産等への分散にも拡大しています。どのような分散を実行するにしても、まずは資産運用に求めるニーズ、そしてリスク・リターンのレベルを考えてみることは、中長期投資を実行する上で、思いのほか大切なプロセスだと思います。また、運用資産に組み入れる金融商品についても、その特性をある程度理解しておく事は、不必要な投資リスクを軽減することにつながります。不確実な時代、めまぐるしい変化の毎日だからこそ、バランス感覚を持った運用を考えたいものです。






