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小説 勝手に進化論

小説・勝手に進化論(#007)作・西田昇平 いたずらな創造主=遺伝子。わが種族は、何故にこの進化の道を選んだのか。人を含む、すべての生き物たちに捧げる、奇想天外、抱腹絶倒の「文学的・哲学的」進化論

●愛と神秘のライトブルー

あんたら人間には、共通の「妖(あや)しの色」みたいなもんは、おまへんのか。何かその色を見るだけで、ムラムラッとくるちゅうか、エッチな気分になるちゅうか、まあ、興奮剤、惚れ薬の役目を果たす色。「色のバイアグラ」とでも言うたら分かるかなぁ。
ニワシドリ一族の中でも、わしらアオアズマヤドリと呼ばれてる一派には、そんな色がおますのや。
それは水色。おお、麗しのライトブルー! あっ、いかん、あの色を思い出しただけで、なんか、せつのうなって来よった。
そのことは、きっと昔から遺伝子に組み込まれておったんやろうけど、わしらがはっきりとそれに気づいたんは、そう、あのときやった。
その日、「庭師」としての腕の悪い、というよりわしらに言わせればゲージュツ的センスのカケラもない1羽の雄鳥が、今日も今日とて、雌鳥に振られよった。もっと有り体に言うなら、どの雌鳥もそいつの作った四阿を見向きもしよらんのやから、「振られまくりよった」と言うたほうが正解やろ。
で、打ちひしがれたおっさんは、近くの湖に身を投げて自殺しようと思うたそうや。しゃーけど、わしらトリの仲間の身体は、そう簡単に水に沈むようには出来とらん。そこで、おっさんは湖の岸辺に降りて、転がっとる小石を飲み込んで重しにしようと考えた。ほんで、手ごろなやつを、1つ、2つとくわえ、天を仰いでは飲み込んでいったんやが、次の石をくわえようとして、洒落じゃなく「鳥肌が立った」というんや。
ゾクゾクッと来て、その次にいままでの憂鬱な気持ちが嘘のように消え、むちゃくちゃハイになった。
その石の色こそ、まさしくライトブルー、官能の色やったんや。
そうしておっさんは、飲み込んだ数個の小石とくちばしの先のライトブルーの「珠玉」とですっかり重くなった身体にむち打って、フラフラになりながら自分の四阿に帰って行きよった。疲れ切ったおっさんは、ライトブルーの石を四阿の入り口に置くと、その横に倒れ伏してしまったそうや。
そしたら、たまたま近くにいて怪訝そうにおっさんのフラフラの生還を見とった雌鳥が、それこそビ・ビ・ビッっと身体を悶えさせながらライトブルーの石のそばに舞い降り、魅入られたように四阿の中に入って行きよった。
おっさんも現金なもんや。それを見るなり息を吹き返して、えらい勢いで四阿に入ったなと思うたときには、もう雌鳥に乗っかっとった。
まさに神秘の色が引き起こした奇跡や。このときから、わいらアオアズマヤドリはニワシドリ(アズマヤドリ)一族の中でも独立した一家を構え、その繁栄を「愛と神秘のライトブルー」が支えることになったというわけや。
で、雄鳥どもは、み〜んなライトブルーの石を探しては、四阿の入り口のところに飾るようになった。そのうち、「1個や2個では感じない!」なんて生意気言うネエちゃんも出てきよったんで、うまいことライトブルーの石の「鉱脈」を探し当てたヤツは5個も10個も、四阿の前に飾るようになった。そうすると、そいつの後を付けて、「鉱脈」から石を横取りするやつも現れよる。アマゾンの金探しの「ガリンペイロ」みたいなもんや。
ほんで、自然にはライトブルーの石なんかそんなにあるもんと違うから、あんたら人間の捨てたゴミの中からライトブルーのもんを選り分けて飾りにするヤツなんかも出てきよった。なんせ、ゴミだろうが何だろうが、とにかくライトブルーの色さえしとったら、それで雌鳥が寄って来よるんやから、きたないも何もないわな。
かくして、ライトブルーの飾りは、愛を語り合う場の必需品になったというわけや。
まあ、わしらがニワシドリやアズマヤドリと呼ばれて、人間の言う四阿を作り、玄関にライトブルーの飾りを置くようになった裏には、こんな、深〜い訳があったんやな。
おい、こらっ! アクビなんかしてどこ行くんや。わしらにはもうひとつ、派手な「求愛ダンス(ポーズ)」という、有名な愛の表現手段があるんやで。その「愛の伝説」は聞いていかんでええのんかーーー!!



<種族その2完。次週より種族その3>

<お断り>
 本書は、進化論をテーマにした小説であり、進化論を科学的に論じたものではありません。進化の過程についても、一般的事実として確立されているもの以外は、あくまでも想像(空想)に基づくものです。あらかじめご了承ください。(筆者)

 

西田昇平(にしだ しょうへい)Shohei Nishida

ライター、編集者。
1951年熊本県生まれ。1974年一橋大学商学部卒業後、信託銀行勤務を経て、IT系のラ イター、編集者として活躍。現在も大手外資系IT出版社で編集顧問を務める。



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