小僧com
50,60はハナタレ小僧。人生の後半戦をアクティブに過ごす元気な小僧たちのコミュニティ。

       ようこそ ゲスト様        

今すぐ見積もりをする!チューリッヒに自動車保険なら、インターネット契約で保険料最大7000円割引!!
【PR】 退院も安心して迎えたい。アクサ生命の入院医療保険(終身型)『セルフガード』 フォントサイズ変更

小説 勝手に進化論

小説・勝手に進化論(#011)作・西田昇平 いたずらな創造主=遺伝子。わが種族は、何故にこの進化の道を選んだのか。人を含む、すべての生き物たちに捧げる、奇想天外、抱腹絶倒の「文学的・哲学的」進化論

●身体の進化か、頭の進化か

なに、聞きたいのはそんなことではないじゃと。進化のことが聞きたいと言うのかな。うむ、そうじゃな。身体の大きさで進化の度合いが決まるというのであれば、ワシらが地球上でいちばん進化の進んだ生物のはずじゃ。──それを食うだなんて、まったく人間というヤツは!
すまん、またいきなりその話に戻ってしもうた。
その人間の説によると、ワシらはデカくなりすぎて陸上では身体を支えきれんようになったんで、進化の道を逆戻りして、海で暮らすようになったそうじゃな。じゃが、本当にそうじゃろうか。
もしそうじゃとしたら、ワシらはそのあとも、とにかく大きくなることを目指したはずではないか。エサの種類によってハクジラとかヒゲクジラとかの亜目に分かれることはあっても、そしてそれによって大きさに違いが生じるようなことはあっても、例えばハクジラの中に、ワシみたいに19メートルにもなるものもおれば、イルカ君たちの仲間のように1メートルぐらいのものもおるというのは、理屈に合わんのじゃないかな。体長1メートル・体重数十キログラムの大きさを、陸上では支えきれんということはないじゃろ。
ということは、ワシらマッコウクジラは進化したが、イルカ君たちは退化したということかな。しかし、諸君らは、ワシらマッコウクジラはともかく、イルカ君たちにはかなり高い知能が備わっておると見ているようじゃないか。それじゃあ何か、IQの検査でもしてみたのかね、と聞きたいところじゃが、それはまあ置いておこう。
で、諸君ら人間の判断を正しいとするなら、鯨の仲間ではいちばん小さなイルカ君たちが(頭脳面では)進化の頂点に立っているとも考えられるわけじゃないか。一方で、もともとの進化の方向である形態的な特徴(大きさ)で判断すれば、彼らは最も進化が遅れている、あるいはさっきも指摘したように、退化すらしていると言えるのじゃないかね。 ということは、ワシらは、大きくなりすぎて陸上では身体を支えきれんようになったというのとは別の理由で、海に戻ったんじゃなかろうかのう。 そう、例えば、より多くのエサのある場所を求めたとか。
そもそも、ワシらの祖先が陸上におったとき、どういうものをエサにしておったのか、いまとなっては皆目見当がつかん。ワシらハクジラの仲間はそれでもまだ、昆虫とか小動物とか、あるいはひょっとしたら植物を食しておったような感じもするが、ヒゲクジラの仲間たちは海辺や沼や湖の岸辺にでも行って、いまと同じようにプランクトンや水生昆虫とかをあさりよったんじゃろうか。そうだとすれば、陸地から攻めるより水の中に入ったほうが、エサは豊富だし取りやすくもあるよのう(もっとも、歯がヒゲに変化したのは、海に帰ったあとかもしれんがのう)。
あるいは、身を守るため、ということも考えられるわなぁ。
ワシらはもともとそんなに攻撃的な性格ではないし、武器となるものも身につけとらん。特に陸上におったころは、身体の大きさのせいで、あまり敏捷でもなかったじゃろうから、肉食獣の格好の標的だったかもしれん。なにせ、外敵の少ない水中に帰ったいまも、諸君ら人間に狙われるほどじゃからのう。そんなわけで、天敵のおらん海に帰ることにしたというのは、十分に考えられることじゃと思わんか。
なに? 鯨の仲間にも、シャチとか攻撃的な種族がいるじゃないかだと?
そうなんじゃ、シャチにはワシらも困っておるんじゃよ。アシカなんかを狙っとる分にはまだいいんじゃが、あいつらはヘタをすると、同じ鯨の仲間も狩りの対象にしよるからのう。実は、全海洋&淡水鯨会議──河イルカなど淡水性の鯨の仲間も加盟しとるんじゃよ──でも、シャチをクジラ目から除名しようという声が強まっておるところなんじゃ。
ちょっと話がそれたが、なぜワシらが陸から海へ帰ったのかは、そういうわけで、いまとなってはワシら自身にも分からんのじゃ。


<次週に続く>

<お断り>
 本書は、進化論をテーマにした小説であり、進化論を科学的に論じたものではありません。進化の過程についても、一般的事実として確立されているもの以外は、あくまでも想像(空想)に基づくものです。あらかじめご了承ください。(筆者)

 

西田昇平(にしだ しょうへい)Shohei Nishida

ライター、編集者。
1951年熊本県生まれ。1974年一橋大学商学部卒業後、信託銀行勤務を経て、IT系のラ イター、編集者として活躍。現在も大手外資系IT出版社で編集顧問を務める。



 小僧SNSへ参加しよう!!

小僧SNSに、西田昇平さんが参加しています。
西田昇平さんのマイページ「昇ちゃん」へは こちら

※閲覧・参加するには小僧SNSへのご登録が必要になります。小僧SNSとは


この記事について是非あなたのご意見を聞かせてください。ご意見はこちらへ