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旅 稲次船長の地中海航海記

第6回 冬の買い物 文=稲次哲郎 今年72歳を迎えられる稲次哲郎さんは、毎年ご自身のクルーザーで、奥様と二人地中海周遊の旅を続けています。
稲次さんの旅には、聖パウロの足跡をたどるという大きな目的があります。そのクルージングの様子はもちろん、さまざまな人との出会いや、支えてくれる現地の人たちとの交流の模様をお伝えします。

こだわりの品々

珍しい物に飛びつく傾向があるので良く笑われるが、何れも通販で音楽関係の新製品を手に入れた。先ずは新しいMD(一万数千円)だ。1GBのMDが出て、これに合わせた小型の録音再生装置には長時間録音装置がついていて40時間以上の音楽が一気に入れられる。再生しながらではなく、PCにつないで、データの転送と同じように音楽を記録する事が出来る。長時間の演奏と言えばマーラーとかブルックナーの交響曲だがこれが何曲も入るので実に凄い。間にピアノ曲やオペラの前奏曲、等趣向を変えて沢山入れる。MD一枚で充分だ。iPodの出現に脅かされたMDの逆襲と見られる。回転を落とした長時間録音は音質劣化が著しいのが常識だが、今度の製品は感心する音だから嬉しい。

次の買い物はラジオ($120)だ。何を今更ラジオをと言われるが、実は宇宙衛星を使ったラジオで年額$120の聴取料を払うと、地中海は何処にいても聞こえる。BBCはじめ数局のニュースと、音質の優れたクラシック音楽がステレオで24時間楽しめる仕掛けだ。英語の他にフランス語とドイツ語アラビア語があるが、残念ながら日本語は無い。NHKの短波放送の内容が問題になったが、実際日本の放送はのど自慢、相撲などに惜し気も無く時間を割いて、誰に向って放送しているのかと思いたくなる。日本の声を世界の人に呼び掛けなくてはなるまいに。

第三は苦労した船の部品($350余)だが、上陸用のゴムボートを吊り上げるウインチで、従来の物は古くなってクラッチが摩滅して滑ってしまい、途中で止める事が出来ない危険な状態になっていたので、新品に取りかえる事にしたのだ。アメリカの元のメーカーに注文して新品をDHLでトルコに送ってもらう事にしたのだが、3日目には東京の我家の玄関に荷物が着いて仰天した。注文主と届け先とが混同して滅茶苦茶になっているのだ。DHLではすぐに責任を認めて東京からトルコに転送する事を引き受けてくれたが、トルコの通関用の書類が付いてなくて大騒ぎとなり、一旦東京のDHLに送り戻さざるを得なくなった。書類を作り直して再送、無事通関を終えてこの部品が愛艇のある所に配達されたのは何と一ヶ月後の事であった。DHLの責任者はしっかり者で、それなりにテキパキと事を運んで感心もしたが、その後に事務方の女性からは、東京の通関料の請求書が送られてきてがっかりした。

大概の部品は欧州製で間に合うが、アメリカ仕様の愛艇はウインチのみならず、電気製品は全部110Vでないと駄目なので220Vの欧州製は間に合わない。更にトルコも欧州も今やメトリックシステムなので、アメリカのインチサイズの部品は取り寄せとなって悩ましい。

関連情報

船で暮らす地中海 稲次哲郎の本●船で暮らす地中海(単行本)
著者:足立 倫行
内容(「BOOK」データベースより)
「家の代わりに船を買う」という欧米人の発想に惹かれて。人生終盤の設計は、地中海で晴耕雨読を満喫したい。“異邦人の使徒”聖パウロの足跡を辿る夢。波乱の商社マン時代に学んだ「現状肯定的発展主義」の生き方。年金でまかなう航海経費で、映画のシーンのような船上生活。
日本人に合った新たな生活の楽しみ方のヒント。

稲次哲郎

稲次 哲郎(いなじ・てつろう) Tetsuro Inaji

1934年中国・奉天生まれ。
一橋大学法学部卒業後、三井物産に勤務。イランの石油プロジェクトなどで活躍。
役員となり、同社中国代表を勤めた後、1995年三井物産を退社。
ベルギー駐在中に芽生えた「夢」を実現するべく、小型船舶操縦士免許、スキューバダイビング上級ライセンスを次々取得。
2000年4月には、フロリダで愛艇「ハイドレンジア号」を購入。8月、フロリダより大西洋を経てマヨルカ島に回航。千恵子夫人と合流して、夢のボート生活をスタートさせる。以後、ボートは現地トルコに保管し、毎年5月〜9月に渡欧して、地中海沿岸を巡航。2004年には、日本人として初めて黒海6カ国就航に成功した。

小僧comアドバイザリーボードメンバー

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