稲次船長の地中海航海記
「東地中海ラリー2006」その規模と内容
このラリーの歴史は古く、今年は17年目に当る。ラリーと言うとパリダカールの自動車のラリーのように競争するものと思うが、このラリーは競争と無縁だ。一昨年は120隻、今年は約80隻のヨット船団を形成、集団で到着予定時間を決め、揃って港に入る。トルコを振出しに約2ヶ月掛けて、東地中海諸国をめぐり、港からはバスに分乗して訪問地の歴史的な遺跡を見物して歩く。
ユネスコの世界遺産として登録された場所は12箇所に及ぶ。こうしたバスガイドは結構当り外れがあるが、概ね良好で、参加者はかなり中東の歴史に明るくなる。更に興味を煽られて冬場は古い本を取り出したり、新しい読み物を求めたりして、訪問地の歴史に親しむので知的満足度は大きい。更に最大の取柄は何と言っても多くの友人を得る事だ。10隻ごとにグループを作り、出発前にグループリーダーから伝達事項を聞くために集まったり、会食の席を共にしたり、バス旅行で一緒だったりする。相互扶助の精神で2ヶ月過ごすのでよほどのひねくれ者でない限り皆親しくなる。かつて団体旅行で行ったような所も、気の置けないヨット仲間と共に青い海を掻き分けて自艇を走らせて訪問する感激は全く特別だ。
毎年トルコの南東、アンタルヤの近くにあるケメル・マリナが主催者となり、このマリナの支配人ハッサンと言うこの世界では有名な男がリーダーとして全体を統括する。然しトルコ人リーダーに権限の集中を避けるためか、運営の実態は英米白各国の経験者を入れた運営委員会が形成されている。ラリーの名誉会長には元トルコ大統領などが担ぎ出されており、トルコ領内の航行には一隻ながら海軍の沿岸警備艇が交代で護衛につく。南海岸を巡り、北キプロスに渡り、シリア、レバノン、イスラエル、エジプトに世界遺産の数々を訪ねる。エジプトの後はイスラエルに戻って解散となる。我々はそこから北キプロス経由トルコに戻って来た。
今年の参加者は約230人、一番多いのはイギリス人で60名以上。それよりやや少ないのがアメリカ人、その後ドイツ、フランス、オランダと続き東洋代表の我々同様一組の参加だけのところが、イタリア、スウェーデン、ノルウェー等あり、全部で21ヶ国の人が参加すると言う国際色豊かな集まりだ。意外な事に、トルコの船3隻と少ないし、近くのギリシャの参加が無い。夫婦で参加しているものが多く、平均年齢は恐らく63歳前後と見られるが、中にまだ歩き出したばかりの男児とそのすぐ上の女児を乗せて参加する若夫婦がいて、人目を引いた。
我々は2003年に初参加、毎年事情があって完走できず、今回やっと本来のプログラムを全部消化した。と言うのも2003年はイラク戦争勃発で、プログラム事態がトルコ領内に限定されてしまった。2004年は少しの時差で黒海のラリーがあり、これがここ当分黒海最後のラリーになるだろうとの噂もあって、この東地中海のラリーをレバノンで中断してイスタンブールに戻り2ヶ月に昇る黒海周航全走航に参加した。2005年は気の為に参加取り止めを余儀なくされた。そんなわけで、毎年共に参加してくれる友人の助力を得ながら、今年は3度目の正直で遂に完走実現、ヨット生活に思い残す事はないと思う程の大満足を得た。走航距離2200浬、エンジン・クロックは230時間を記録、その間に5000リッター強の燃料を消費、原油値上がりの影響をもろに受けた。この間今年はイスラエルからの帰路北キプロスまで320浬の最長無寄港航海記録を樹立した。これまでは2004年黒海で、ソチからヤルタに向けて250浬走った記録であった。








